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天の目は誤らない——誠実な人には報いがあり、偽る人には罰がある

誠実で節操のある人格者は、
自ら幸せになろうとあくせく求めず、静かに道を歩んでいく。
その「無心さ」こそが美徳であり、
天はその姿を見て、その人の真心に応えようとする。

反対に、心がねじれ、陰険な人は、
自らの悪を隠しながら、うまく禍を避け、
世渡りの術で乗り切ろうとする。
しかし天は、それすらも見抜いていて、
かえってそのような人の「魄(はく)」――魂の根を奪い、戒める。

このように、天のはたらき――いわば「天意」は、
人間の知恵や策略ではどうすることもできない、
神秘的で、正確で、厳粛な判断力を持っている。

だからこそ私たちは、
計算や小手先の知恵よりも、誠実な本心を守るべきなのだ。


原文とふりがな付き引用

貞士(ていし)は福(ふく)を徼(もと)むるに心(こころ)無し。
天(てん)は即(すなわ)ち無心(むしん)の処(ところ)に就(つ)いて、其の衷(ちゅう)を牖(さと)く。
憸人(せんじん)は禍(わざわい)を避(さ)くるに意(い)を着(つ)く。
天は即ち着意(ちゃくい)の中(なか)に就いて、其の魄(はく)を奪(うば)う。
見(み)るべし、天の機権(きけん)の最(もっと)も神(しん)なるを。
人の智巧(ちこう)は何(なん)の益(えき)かあらん。


注釈(簡潔に)

  • 貞士(ていし):誠実で節操のある人物。利を求めず、道に生きる人。
  • 牖く(さとく):導く、悟らせる。ここでは「応えて報いる」の意。
  • 憸人(せんじん):ねじれた心を持ち、陰険な性質の人。表面は良さそうでも内面に邪念がある。
  • 魄(はく):身体と精神を支える「魂」のもう一つの要素。活力の源。
  • 機権(きけん):天のはたらき。人知では測れない神妙な仕組み・裁き。
  • 智巧(ちこう):策略、知恵、器用さ。人間の浅はかなはかりごと。

パーマリンク案(英語スラッグ)

heaven-sees-all
「天はすべてを見ている」という核心をそのまま表した、簡潔なスラッグです。

その他の案:

  • virtue-wins-invisibly
  • you-can’t-fool-heaven
  • true-heart-invites-blessing

この章は、道徳と天意という古典思想の本質を直球で語っています。
「見ている人はいない」「どうせ誰にも分からない」という発想を捨て、
“見ているのは人ではなく、天である”という視座に立ったとき、
私たちははじめて、真に誠実な人生を選び取れるのです。

1. 原文

貞士無心徼福。天卽就無心處、牖其衷。憸人着意避禍。天卽就着意中、奪其魄。可見、天之機權最神。人之智巧何益。


2. 書き下し文

貞士(ていし)は福を徼(もと)むるに心無し。
天は即ち無心の処に就いて、其の衷(ちゅう)を牖(ひら)く。
憸人(せんじん)は禍を避くるに意を着く。
天は即ち着意の中に就いて、其の魄(はく)を奪う。
見るべし、天の機権(きけん)の最も神なるを。
人の智巧(ちこう)は何の益かあらん。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 貞士無心徼福
     → 篤実な人物(貞士)は、幸運を求めて行動しようとしない。
  • 天卽就無心處、牖其衷
     → 天は、そうした無心なところにこそ働きかけ、その人の内面を啓(ひら)いてくれる。
  • 憸人着意避禍
     → 心が狡猾な人間(憸人)は、災いを避けようと意図的に画策する。
  • 天卽就着意中、奪其魄
     → 天は、その意図に満ちた心に働きかけ、かえってその魂(精神)を奪ってしまう。
  • 可見、天之機權最神
     → これを見るに、天の働き(機権)は、まことに神秘的で計り知れない。
  • 人之智巧何益
     → 人間のはかりごとや小賢しい知恵など、何の役に立つだろうか。

4. 用語解説

  • 貞士(ていし):誠実で正しく節操ある人物。徳の高い人。
  • 徼福(ぎょうふく):福を求めてあれこれ行動すること。
  • 牖(ひらく):啓く、導く、照らし出す。
  • 衷(ちゅう):真心、内面、誠意。
  • 憸人(せんじん):心が曲がっていて、狡猾で私利私欲に走る人。
  • 魄(はく):魂・精神・心の働き。
  • 機権(きけん):自然や天の理のもつ精妙なはたらき、運命の調整力。
  • 智巧(ちこう):知恵と器用さ。小手先の工夫。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

誠実な人物は、幸福を得ようとしてあれこれと欲深く行動したりはしない。
天は、そうした無心の境地にある人の心の奥底を啓いて、導いてくれる。

これに対して、ずる賢い人間は、災いを避けようと意識的に動き回るが、
天はその意図的な行動にこそ働きかけて、その魂の力を奪ってしまう。

このように見れば、天のはたらき(自然の理)はまことに神妙で奥深い。
人間の浅知恵や小賢しい策略など、いったい何の役に立とうか。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「無心の誠実さ」と「意図的な損得勘定の危うさ」**を対比的に描き、
天(自然・運命・道理)に従う心構えの大切さを説いています。

  • **誠実な人(貞士)**は、打算なく行動することで、かえって天が導いてくれる。
  • **狡猾な人(憸人)**は、すべてを計算で動くが、その心の濁りによって天からの加護を失う。

つまり、真心・無欲・誠実こそが、結果的に「運」に導かれる要因であるという教えです。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ 成果や評価を意識しすぎない、無私の仕事が信頼を生む

「昇進したい」「利益を得たい」──そうした意図は時に行動の純度を下げる。
誠実に行動し、結果は天に任せるという姿勢が、周囲の信頼と評価を得る道。

▪ 損得を第一にする“狡猾さ”は、短期的には通じても、長期的信頼を失う

ずる賢さでトラブルを回避しようとしても、
「誠実な不器用」にはかなわないことがある。
天(=社会の正義・人の信頼)は、意図的な行動の中に潜む利己心を見抜く。

▪ 「運」もまた誠実な人に味方する

予想外の支援、好機の到来など、**努力以上の「天の助け」**は、
誠実に無心で取り組む人に訪れやすい。


8. ビジネス用の心得タイトル

「無私の誠が運を呼ぶ──“天に見透かされる心”のあり方」


この章句は、「損得計算ではなく誠実に生きよ」という教訓にとどまらず、
運命や社会は意図や心の姿勢を見抜き、それに応じた結果をもたらすという、
東洋的な深い人生哲学を表現しています。


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