形式よりも、心が宿る素朴さを選ぶ
孔子は、礼儀や音楽(礼楽)が時代とともに洗練されていく中で、古き素朴な形にこそ本質が宿ると説いた。
古代の礼楽は、粗削りながらも人のまごころがこもっていた。
時代が下るにつれ、洗練された形式美が加わり、見た目には立派になったかもしれない。
しかし、もし選べるなら、自分は原点である「先人たちの素朴な礼楽」に従いたい――孔子はそう語る。
形式の美しさに惑わされず、本来の意味や精神を見失わないこと。
文化の進化にあっても、心の原点を見失わない姿勢こそ、孔子が大切にした態度である。
引用(ふりがな付き)
子(し)曰(い)わく、先進(せんしん)の礼楽(れいがく)に於(お)けるや、野人(やじん)なり。後進(こうしん)の礼楽に於けるや、君子(くんし)なり。
如(も)し之(これ)を用(もち)うれば、則(すなわ)ち吾(われ)は先進(せんしん)に従(したが)わん。
注釈
- 礼楽(れいがく):礼儀作法と音楽。社会秩序と精神の涵養を担った制度。
- 野人(やじん):未洗練で飾らない人々。素朴さと誠実さの象徴。
- 君子(くんし):この文脈では洗練された者。外面は整っていても、内面のまごころが伴わないこともある。
- 先進・後進:周の初期(先進)と後期(後進)を意味し、孔子は初期の素朴さを重視した。
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