MENU

社長自ら営業の先頭に立て

C社から営業マンのトレーニングを依頼された。営業成績が期待通りというどころか、かなり低迷しているとのことだ。C社は生産財を手がけるメーカーである。

話を聞いてみると、経営層や部長クラスは生産の効率化や内部管理に追われており、販売にはほとんど関与していないようだ。実際の販売責任は課長クラスが担っているらしい。

部長以上の役職者は、販売に関してはただ鼓舞するだけの存在に過ぎない。その結果、実質的な販売の最高責任者は、数名の営業課長が担う形になっている。

これは実に由々しき事態だ。経営者が販売に力を注がず、生産ばかりに注力しているのでは、それは会社ではなく、単なる工場に過ぎない。売ることを考えずにいくら生産を続けても、業績が向上するはずがない。特に、製品が生産財である場合は、なおさら「トップ営業」が不可欠なのだ。

販売の原理は製品の種類によって異なる。多量生産品の場合、販売網の整備が成功の鍵を握る。一方で、装置工業製品は新たな需要の開拓が最優先となる。そして、生産財においては、トップ営業でなければ業績の向上は望めない。

販売網の整備や新需要の開拓においても、トップが目標を明確に設定し、自ら指導する責任は不可欠だ。しかし、これらの場合、トップが常に第一線に立つ必要はない。

しかし、生産財においては、トップが常に営業の第一線に立つことが求められる。この原則を無視して、いくら部下にハッパをかけても、その効果は限られる。セールスマンの訓練に力を注ぐよりも、まずトップ自身が変わることが必要なのだ。

販売がなければ経営は成り立たない。ゆえに、企業の規模や業種、業態にかかわらず、社長自身が営業活動を担うか、もしくは社長に次ぐ地位の人物が販売の実質的な最高責任者であるべきなのだ。

特に中小企業では、社長自ら営業に取り組むことが最善の方法だというより、それ以外に道はない。社長自身がお客と直接接し、そのニーズを正確に把握し、それを満たすための方策を常に考え続ける必要がある。これこそが中小企業の経営を支える基本である。

会社を訪問して社長に会った際、もし社長が汚れた作業着を着ているのを目にしたら、「この会社は期待できない」と直感的に思う。

たとえ作業着を着ていても、それは上着だけで済ませ、汚れのない状態を保つべきだ。その下にはワイシャツとネクタイを着用し、上着を脱げばすぐに背広を羽織って外出できる準備が整っているのが理想だ。

率先垂範すべきは、物をつくる現場ではなく、販売の現場である。社長が営業に力を注がないというのは、経営に対する理解が不足していると言われても仕方がない。営業活動なくして経営が成り立つことなどあり得ないのだから。

社長自ら営業の先頭に立つべき理由

C社の事例からわかるように、営業活動を経営者や上層部が軽視しては、会社の成長は望めません。特に中小企業において、社長自らが営業の最前線に立つことで、会社の収益や発展が確実に変わってきます。以下が、社長が営業活動に積極的に取り組むべき理由です。

  1. 経営者のトップ営業が必須
    生産財のように専門性が高い製品の場合、社長自らが第一線で営業に取り組む「トップ営業」が不可欠です。単なるハッパをかけるだけではなく、社長自身が顧客と接し、ニーズを直接感じ取ることが、競争力を高め、長期的な関係を築くために大切です。
  2. 社長の現場参加が営業力を高める
    顧客の要求や市場の動向を把握し、営業戦略に反映することは、社長が行うべき重要な役割です。部長や課長に任せきりでは、情報の伝達に時間がかかり、迅速な対応ができません。社長が現場に出ることで、タイムリーな判断が可能となり、会社全体の営業力が強化されます。
  3. 「売ること」への認識が経営を左右する
    社長が営業に力を入れず、内部管理や生産にばかり集中している会社は、ただの「工場」になってしまいます。販売活動こそが企業に収益をもたらし、成長の原動力となるため、社長が自ら率先して売る姿勢を示すことで、社員にも営業活動の重要性が浸透します。
  4. 率先垂範の姿勢が会社全体の士気を高める
    社長自らが顧客の前に立ち、会社の顔として営業活動に取り組む姿勢は、社員にも大きな影響を与えます。社長が営業に力を注ぐことで、営業担当者も自信を持って活動でき、会社全体の士気が高まります。

営業活動が経営の中核である以上、特に中小企業の社長は自ら営業の最前線に立ち、顧客との信頼関係を築くことが必須です。顧客の要求を深く理解し、会社のすべての活動をそのニーズに応じて最適化するためにも、社長自身が率先垂範して営業に関わるべきなのです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次