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教養も節度もない者は、近づいても遠ざけても難しい

孔子は、教養や節度に欠けた者との接し方の難しさについて、次のように語った。

「教養のない女性(=淑女でない女性)と、小人(しょうじん)――つまり徳に乏しく利己的な人間は、扱いにくいものである。
こちらが情をもって親しく接すれば図に乗り、距離を置けば逆恨みをする」。

これは、相手に人間としての分別や徳が備わっていないと、いかに誠実に接しても誤解や反発を招きやすいことを示している。
また、「近づけば不遜(=尊大になり)、遠ざければ怨む(=憎しみを抱く)」という両極の反応は、未成熟な心の特徴ともいえる。

孔子の意図は単なる差別や断罪ではなく、徳のない者を安易に扱うことの危険と、相手を選ぶことの重要性を説いたものである。


子(し)曰(のたま)わく、唯(ただ)女子(じょし)と小人(しょうじん)とは、養(やしな)い難(がた)しと為(な)すなり。
之(これ)を近(ちか)づくれば則(すなわ)ち不孫(ふそん)、之を遠(とお)ざくれば則ち怨(うら)む。

現代語訳:
孔子は言った。「教養のない女性と、小人は扱いが難しい。
親しくすれば調子に乗り、距離を置けば恨みを抱く」。


注釈:

  • 女子(じょし):この語は現代の一般的な「女性」を意味するのではなく、ここでは「教養・品格に欠けた女性」を意味する。対義語は「淑女」。
  • 小人(しょうじん):人格の小さな者。利己的で道理をわきまえない人物。君子の対義語。
  • 養い難し(やしないがたし):取り扱いが難しい。関係の築き方が非常に繊細であるという意。
  • 不孫(ふそん):つけあがって礼儀を欠くこと。謙遜しない態度。
  • 怨む(うらむ):感情的に反発し、悪感情を抱くこと。

原文:

子曰、唯女子與小人、爲難養也。近之則不孫、遠之則怨。


書き下し文:

子(し)曰(い)わく、
「唯(ただ)女子(じょし)と小人(しょうじん)とは、養(やしな)い難(がた)しと為(な)すなり。
之(これ)を近(ちか)づくれば則(すなわ)ち不孫(ふそん)なり。
之を遠(とお)ざくれば則ち怨(うら)む。」


現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  1. 孔子は言った:
    「女性と小人物(=器の小さい人、徳のない人)というものは、扱うのが難しいものだ。」
  2. 「親しくしすぎれば、つけあがって礼を失う。
     遠ざければ、恨みを抱く。」

用語解説:

  • 女子(じょし):当時の儒教的世界観に基づく表現であり、現代の「女性一般」を指すものとは異なる。しばしば「感情的になりやすく、礼節の訓練が不足している者」の象徴的表現として使われる。
  • 小人(しょうじん):徳のない小人物。自己中心的、目先の利害にとらわれやすい人間。
  • 養い難し(やしないがたし):教育・管理・対応が難しいこと。
  • 不孫(ふそん):謙虚でなくなること。礼儀を欠く態度。
  • 怨む(うらむ):恨みを持つ、逆恨みする。

全体の現代語訳(まとめ):

孔子はこう言った:

「女性と小人物は、扱いが難しいものである。
 親しくしすぎると、礼を失って傲慢になるし、距離を取れば恨みを抱く。
 バランスを取って接することが必要だ。」


解釈と現代的意義:

この章句は、現代においては解釈に注意が必要です。

  • 当時の文脈では「女子」は、教育の機会や社会的役割が制限された人々を指し、「小人」と並列に語ることで**“礼の未発達な存在”の象徴**として扱われていました。
  • この章句の本質は、**「感情や未熟さが強く出やすい相手との関係性管理の難しさ」**にあります。
  • **「近づきすぎれば無礼に、距離を置けば不信に」**という、人間関係における距離感の取り方の難しさを示した名言と捉えるべきです。

ビジネスにおける解釈と適用:

「人間関係の“距離設計”は戦略的に」

  • 部下・同僚・取引先との関係において、「親しさ」と「敬意」のバランスは常に問われる。
  • 近づきすぎればなれ合いに、離れすぎれば冷淡と取られる可能性がある。
  • 適切な距離=信頼と尊敬が共存する空間をつくることが肝要。

「マネジメントに必要な“中庸の知恵”」

  • 若手社員や経験の浅いスタッフに対し、放任すれば軽視され、干渉すれば嫌われる。
  • 指導においては、“導きつつ尊重する”姿勢が大切。
  • 「任せる・見守る・注意する」この3つのバランスが信頼関係を生む。

「感情的な反応には“冷静と礼”で応じる」

  • 批判的・不満を抱きやすいメンバーには、感情で返すのではなく、礼節と論理で応じることで、徐々に信頼を回復できる。

ビジネス用心得タイトル:

「近すぎず、遠すぎず──信頼は“礼節の距離”に宿る」


この章句は、現代的には性別を超えて、“未成熟な人格への関わり方”のバランスを説くものとして読むべきです。
人材育成、チームビルディング、マネジメント研修において、「距離感の知恵」として展開可能です。


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