目次
📜 引用原文
第一四章 憎しみ 九
「かれは、われを罵った。
かれは、われにこんなことを言った。
かれは、われにうち勝った。
人をしてわれに打ち勝たしめた。」
という思いをいだく人々には、
怨みはついに息むことがない。
— 『ダンマパダ』
🔍 逐語訳
「あの人は私を侮辱した」
「あの人は私にあんなことを言った」
「あの人は私に勝った」
「あの人は他人を使って私を打ち負かした」
――このような思いを抱く人々には、
その怨みの念は、決して消えることがない。
🧩 用語解説
- 罵った/言った:実際の言葉の暴力、もしくはそう感じた言葉への執着。
- うち勝った/打ち勝たしめた:競争や対立の結果として「敗北した」と感じることへの執念。
- 思いをいだく:内心にその念を保持し続けること。執着の始まり。
- 怨みはついに息むことがない:その思考が続く限り、怒りや憎しみの炎は決して鎮まらないことを意味する。
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
「あいつは私を侮辱した」
「こんなことを言った」「私に勝った」「私を辱めた」――
こうした思いを心に抱き続ける人は、
決して心の中から怨みが消えることはない。
その念こそが、怒りと憎しみの根源となり、
心の平和を遠ざける原因となるのである。
🧠 解釈と現代的意義
この句は、「怨みとは相手ではなく、自分の中で育つもの」であることを教えています。
人は、自分が受けた言葉や出来事に固執することで、
何度もその苦しみを心の中で再生してしまいます。
怨みとは、記憶に支えられた執着であり、
それを抱き続ける限り、心は決して自由にはなりません。
つまり、「許す」とは相手のためではなく、
自分を解放するための行為なのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での活用例 |
---|---|
人間関係のマネジメント | 昔の発言や態度に執着していると、今の協業や対話が阻害される。思いをリセットできる力が信頼を生む。 |
敗北感と対抗心 | プレゼンに負けた、評価されなかった、という思いを抱き続けると、建設的な思考ができなくなる。 |
メンタルヘルス | 怨みや怒りに満ちた思考は、本人にとっても精神的・身体的に悪影響を与える。思考の転換が必要。 |
リーダーの姿勢 | 部下や同僚に対する過去の不満をいつまでも引きずらず、公正な判断と未来志向の対話を行うことが重要。 |
🧭 心得まとめ
「過去の言葉に執着する者は、未来の自由を失う」
「怒りを抱き続ける限り、傷つけるのは常に自分自身だ」
この句は、「恨みとは過去の出来事に現在を支配されること」だと教えています。
そして、その苦しみは**「相手が何をしたか」ではなく、「自分がどう思い続けるか」**によって生まれるのです。
思いを手放すこと、それが本当の強さであり、自由への第一歩。
この教えは、仏教における「心の統御」「執着の超克」の核心でもあります。
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