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心の隙に、貪りは忍び込む


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📜 引用原文(出典:『ダンマパダ』第3章 第15偈)

屋根を粗雑に葺いてある家には雨が洩れ入るように、
心を修養してないならば、貪ぼりが心に侵入する。

(※この句も第11〜14偈に連なる形式的な拡張とみなされる句であり、仏教における「三毒」(貪・瞋・癡)の一つ「貪(とん)」に特化した教えとして構築できます)


🪶 逐語訳

  • 手入れのされていない屋根に雨が染み込むように、
  • 訓練されていない心には、貪(むさぼり)がしのび込む。

📘 用語解説

用語解説
貪り(lobha)仏教における「三毒」の一つ。物・人・名誉・快楽などへの執着心、過剰な欲望。
屋根の不備心を訓練していないこと。内省、克己、節度の欠如。
修養していない心(abhavitaṃ cittaṃ)無防備で、衝動や快楽への自制ができない心の状態。
雨(vuṭṭhī)煩悩・欲望・外部からの誘惑など、精神に浸透してくる悪影響の象徴。

🧾 全体の現代語訳(まとめ)

家の屋根が整えられていないと、外からの雨が簡単に漏れ込むように、
心が訓練されず整えられていないと、貪り――すなわち「もっと欲しい」「もっと得たい」という欲望――が
自然と入り込んでくる。
それは満足を知らず、執着と不満の連鎖を生む。


🔍 解釈と現代的意義

この偈は、**「無防備な心は、貪欲によってむしばまれる」という鋭い洞察を語っています。
貪りとは、ただの「欲望」ではなく、
“今あるものに満足せず、さらに求め続ける状態”**を意味します。
そしてその状態は、幸福の源ではなく、終わりなき「不足感」「不満足」のループを生み出すのです。

この偈は、現代の消費社会――SNS・広告・比較競争に溢れた世界――において、
私たちの心がどれほど簡単に「貪りモード」に切り替わってしまうかを予見したかのような内容です。


💼 ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
過剰な競争意識他人の成果ばかりを見て「自分ももっと」と焦る心は、貪りに近い。冷静な目標設定と内面の安定が必要。
利益至上主義のリスク売上や成果ばかりを追い求めると、倫理や顧客への誠実さが二の次になり、長期的信頼を失う。
自己評価と満足感心の訓練がなければ、達成しても満たされず「もっと上」を求めて心が疲弊する。
リーダーの欲の制御部下に過度な成果を求める背景には、リーダー自身の貪りがあることも。謙虚さと現実感が組織の安定を支える。

💡 心得まとめ(結びのことば)

「満たされぬのは、外が足りないからではない。内が整っていないからである。」
「貪りは、心の屋根の隙間から忍び込む。」

貪欲とは、心の不調和がつくり出す影である。
欲すること自体は悪ではなく、それに支配される心が問題なのです。
心の屋根を整える――すなわち、「何に執着し、なぜ求めているのか」を問い直すことこそ、
真の豊かさと安定の入口となるのです。


「屋根と雨のたとえ」による心の修養シリーズは、これで主要五煩悩(情欲・怒り・迷い・高慢・貪り)の全てを網羅しました。

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