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寛さは幸いを呼び、こせこせは福を逃す

仁ある人――すなわち思いやり深く、他人の立場に立てる人は、心が寛やかでゆったりとしている。そのゆとりが、深い幸福と長く続く喜びをもたらし、あらゆる言動にも自然とゆとりが表れる。

これに対して、鄙しい人――すなわち心が卑しく、目先の損得ばかりを考える人は、いつも気持ちがせかせかしていて、喜びも浅く、幸せも続かない。行動にもその「こせこせ感」がにじみ出るため、どこかみすぼらしく見える。

孔子も言う、「君子は坦々としてゆったりしているが、小人はいつも気に病んでいる」。寛容な心は人生を豊かにし、逆に狭量さは自らの福を縮めるのだ。


原文と読み下し

仁人(じんじん)は心地(しんち)寛舒(かんじょ)なれば、便(すなわ)ち福(ふく)厚(あつ)くして慶(けい)長(なが)く、事事(じじ)、個(こ)の寛舒(かんじょ)の気象(きしょう)を成(な)す。
鄙夫(ひふ)は念頭(ねんとう)迫促(はくそく)なれば、便ち禄(ろく)薄(うす)くして沢(たく)短(みじか)く、事事、個の迫促(はくそく)の規模(きぼ)を得(え)ん。


注釈

  • 寛舒(かんじょ):ゆったりとした心。思いやりや余裕がにじむ気質。
  • 迫促(はくそく):せかせか・こせこせして落ち着きのない心の状態。
  • 仁人(じんじん):仁を持つ人。『論語』では長寿であるともされる(「仁者は寿し」)。
  • 鄙夫(ひふ):心が卑しく、狭量な人。利己的で視野が狭い。
  • 君子は坦として蕩蕩たり、小人は長に戚戚たり(『論語』述而第七)
     → 君子はいつもおおらかで落ち着いており、小人は常に不安や焦りを抱えている。

パーマリンク(英語スラッグ)案

  • grace-of-generosity(寛容がもたらす品格)
  • calm-heart-deep-joy(穏やかな心がもたらす深い喜び)
  • small-mind-small-blessings(狭い心は小さな幸せしか得られない)

この心得は、現代社会における人間関係やビジネスの姿勢にも直結します。急がず、こせこせせず、余裕を持って接することが、真に信頼される人をつくります。

目次

1. 原文

仁人心地寬舒、福厚而慶長、事事得個寬舒氣象。
鄙夫念頭促、祿薄而澤短、事事得個促規模。


2. 書き下し文

仁人は心地寛舒(かんじょ)なれば、すなわち福厚くして慶(けい)長く、事事(じじ)、個の寛舒の気象を得。
鄙夫(ひふ)は念頭(ねんとう)迫促(はくそく)なれば、すなわち禄(ろく)薄くして沢(たく)短く、事事、個の迫促の規模を得。


3. 現代語訳(逐語・一文ずつ訳)

一文目:

仁人は心地寛舒なれば
→ 思いやりのある人物は、心が広く穏やかであるため、
福厚くして慶長く
→ 幸福は厚く(深く)なり、祝い事(良い出来事)は長く続き、
事事、個の寛舒の気象を得
→ あらゆることにおいて、寛大でゆとりある雰囲気が生まれる。

二文目:

鄙夫は念頭迫促なれば
→ 心の狭い者(俗物・利己的な人)は、思考がせせこましく、焦ってばかりであるため、
禄薄くして沢短く
→ 与えられる恩恵(報酬)は少なく、恵みも長続きしない。
事事、個の迫促の規模を得
→ どんな事柄にも、狭量で窮屈なスケールしか得られない。


4. 用語解説

  • 仁人(じんじん):仁徳を備えた人。思いやりと誠実さを持つ人物。
  • 寛舒(かんじょ):心が広く、ゆったりしていること。寛大さ・余裕。
  • 福厚(ふくあつ):深く豊かな幸福。
  • 慶長(けいちょう):祝いごと・幸運が長く続くこと。
  • 鄙夫(ひふ):見識や教養のない人。利己的で俗っぽい人物。
  • 念頭迫促(ねんとうはくそく):思考がせわしなく、焦ってばかりいること。
  • 禄(ろく):地位・報酬・恩恵など。
  • 沢(たく):潤い、恩恵、恵み。
  • 規模(きぼ):事物の枠組み、スケールや器の大きさ。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

思いやりと徳のある人は、心にゆとりがあり、穏やかであるために、深い幸福を得て、よいことが長く続く。日々のあらゆることにも、落ち着きとゆとりのある雰囲気があらわれる。

一方で、心の狭い人は、思考が焦りや急ぎに支配されているため、報いは乏しく、幸運もすぐに尽きる。そのため、行うことすべてがせせこましく、狭いスケールにとどまってしまう。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「心のあり方が人生のスケールを決める」**という人生哲学を示しています。

心が広く落ち着いた人は、他人の過ちを許し、物事を長期的・大局的に捉えることができるため、結果的に良縁・成果・運が持続しやすくなります。

反対に、視野が狭く、何事にもすぐ苛立ち、せっかちな人は、周囲と軋轢を生み、機会を逸し、物事を“自分で小さくしてしまう”。

つまり、**「器の大きさが運命を分ける」**ということを、この章句は端的に伝えています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「寛容な心が“信頼”と“成果”を生む」

他人の失敗に厳しく当たり、常に焦って動くリーダーは、部下に萎縮を生む。一方で、寛容なリーダーは挑戦する機会を与え、組織の器も大きくなる。

●「“余裕のある人”には自然と機会が集まる」

焦って結果を求める人よりも、落ち着いて全体を見渡せる人にこそ、信頼・プロジェクト・人脈が集まってくる。

●「短期目線と苛立ちは“狭い成果”しか生まない」

売上や評価を急ぐあまり、すぐに結果を求める姿勢は、長続きするビジネス関係や顧客満足を損なう。

●「器の大きさは“ゆとりと寛さ”から育つ」

スケジュールに余白を設ける、他人の意見をまず受け止める、長期的な視点を持つ──こうした習慣が、個人や組織の“福厚而慶長”を築く。


8. ビジネス用の心得タイトル

「狭量は運を逃がし、寛容は福を育てる──“心の器”が成果のスケールを決める」


この章句は、まさにリーダーシップ・マネジメント・人材育成の核となる「人格の器」についての指針です。組織内でのメンター制度やチームビルディング研修の柱としても活用できる内容です。

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