目次
■引用原文（日本語訳）
三一
この世で善いことをしたならば、安心しておれ。
その善いことが、ずっと昔にしたことだとか、
遠いところでしたことであっても、安心するがよい。
人に知られずにしたことであっても、安心しておれ。
それの果報があるのだから、安心しておれ。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- この世で善いことをしたならば、安心しておれ：あなたが善行を行ったなら、それがどんなに小さくても確かに報われるから、心配せずともよい。
- 昔のこと・遠くのこと・知られないこと：どんなに時や場所が離れていても、また他人に認知されていなくても、善は善として蓄積されている。
- 果報がある：その善行には必ず報いがある。表面には現れなくても、確実に運命や心を導く力となる。
■用語解説
- 善いこと（善行）：他者に対して思いやり、誠実、助け、真実を尽くす行為。形よりも心が重要。
- 安心しておれ：仏教的には「安穏（あんのん）」とも訳される。内面の平穏と信頼に満ちた状態。
- 果報（かほう）：因果の法則に基づく報い。善因には善果がもたらされる。
■全体の現代語訳（まとめ）
たとえどんなに昔のことであっても、また誰の目にも触れなかったとしても、あなたが行った善行には、必ず報いがある。
だから心配せず、信じて、安心していればよい。
善は、静かに、しかし確実に、あなたの人生に花を咲かせる。
■解釈と現代的意義
この偈は、「見返りのない善行」に対する仏教的な励ましであり、
他者に知られずとも、自分の信念に基づいて善を行う価値を教えています。
現代社会では「成果が可視化されなければ意味がない」と思われがちですが、
ギーターやダンマパダにおいては、「見えない善」「知られない誠意」こそが真に尊いとされます。
この偈は、孤独な努力、報われない善意、自分だけが知っている良心の行為に対して、
「それでいい、そのままでいい」と確信を与えてくれる言葉です。
■ビジネスにおける解釈と適用
| 観点 | 応用例 |
|---|---|
| 信念を持った行動 | 他人に評価されなくとも、正しいと思う行動を継続する人が、最終的に信頼を勝ち取る。 |
| 隠れた貢献 | 裏方業務や、見えにくい努力は必ず組織に良い影響をもたらし、どこかで必ず評価される。 |
| 善意の累積 | 顧客や同僚への誠意ある対応が、見えない信用資産となって将来の成果につながる。 |
| 内なる自信 | 成果がすぐに現れないときでも、自分の行いを信じて不安に揺れない精神が、真のリーダーシップを育てる。 |
■心得まとめ
「見えない善も、実りの種である」
善いことをしたなら、
それが誰にも知られなくても、
遠く離れた地であっても、
昔のことでも――心配はいらない。
あなたの中に芽を宿し、
必ず花開く日がくる。
だからこそ、安心して善をなせ。
それがあなたの運命を、静かに、美しく導いていくのだから。
この偈は「内面的な誠実さ」「自己承認」「長期的信頼構築」の文脈でも活かすことができます。
コメント