■ 引用原文(『ダンマパダ』第八章「ことば」第八偈)
善いことばを口に出せ。
悪いことばを口に出すな。
善いことばを口に出したほうが良い。
悪いことばを口に出すと、悩みをもたらす。
■ 逐語訳
- 善いことばを口に出せ:相手を励まし、真実を伝え、徳を高めるような言葉を語るべきである。
- 悪いことばを口に出すな:侮辱・怒り・虚偽・中傷などの害をなす言葉は控えるべきである。
- 善いことばを口に出したほうが良い:口に出す言葉には影響があるゆえに、選ぶなら善なる言葉を。
- 悪いことばを口に出すと、悩みをもたらす:言った本人にも、聞いた相手にも、周囲にも害が及ぶ。
■ 用語解説
- 善いことば(クサラ・ヴァチャ):慈しみ・思いやり・真実・敬意をもって語る言葉。仏教で重視される「正語(しょうご)」の一部。
- 悪いことば(アクサラ・ヴァチャ):虚言、悪口、綺語、両舌など、五戒における「口の悪業」に該当。
- 悩み(ドゥッカ):精神的な苦しみ、不安、後悔、怒りの連鎖などを含む広義の苦しみ。
■ 全体の現代語訳(まとめ)
あなたが口にするなら、善い言葉を語りなさい。人を傷つけるような悪しき言葉を語ってはならない。
なぜなら、善い言葉は福をもたらすが、悪い言葉は必ず悩みと苦しみを呼び込むからである。
■ 解釈と現代的意義
この偈は、「言葉がもたらす因果の力」を、非常に端的に示したものです。
日常の些細な一言が、人の心を癒すこともあれば、深く傷つけることもある。
口にした瞬間、それは「行為」となり、発した人の人格・信頼・運命に影響を及ぼします。
現代では、言葉は直接の会話だけでなく、メール・SNS・レビュー・メディア発信などあらゆる形で拡散しやすくなっています。
だからこそ、「話す前に善し悪しを見極める力」が求められるのです。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
職場のコミュニケーション | 建設的で励ましのある言葉は、職場の雰囲気を良くし、信頼と協力を生む。 |
クレーム・対話対応 | 顧客や取引先に対して、丁寧で善意ある言葉を使えば、関係は好転する。逆に失礼な言葉は炎上のもと。 |
マネジメント | 部下を評価するとき、否定的な言葉ではなく、改善と成長を促す善い言葉を選ぶことで、動機づけが高まる。 |
言葉の後悔 | 感情的な発言や不用意な一言が、後に大きなトラブルや信用失墜に繋がるケースは多い。善い言葉は未来を守る盾となる。 |
■ 心得まとめ
「語るならば、癒すことばを。沈黙できぬなら、善きことばを。」
言葉は道具であり、刃でもあり、贈り物でもあります。
どの言葉を選ぶかは、あなたの人間性の鏡です。
ビジネスにおいても日常においても、「相手の徳を高め、自らの心を清らかにする」言葉こそが、最も強く、最も優しい影響力を持つのです。
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