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易きに流れるな。善は険しく、価値がある


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■引用原文(日本語訳)

『ダンマパダ』第十二章「自己」第163偈

「善からぬこと、己れのためにならぬことは、なし易い。
ためになること、善いことは、実に極めてなし難い。」


■逐語訳

  • 悪しきこと(pāpakam)
  • 自分に利益とならぬこと(attano ahitānī)
  • それを行うのは易しい(karoti naṃ sukhaṃ)
  • 自己にとって益すること(hitam attano)
  • それは極めて行い難い(taṃ hi kammaṃ durabhisambhavam)

■用語解説

  • 善からぬこと(pāpakam):道徳的に悪い行為。短期的快楽を与えるが、長期的には害をもたらす。
  • 己れのためにならぬこと(attano ahitānī):一見ラクでも、結果として自己に不幸をもたらす言動や態度。
  • ためになること(hitam attano):真に自己の成長・幸福に資する行い。徳・誠実・努力など。
  • なし難い(durabhisambhavam):「極めて成しがたい」ほど難しいが、同時に価値が高いことを暗示する。

■全体の現代語訳(まとめ)

自分にとって悪く、害になるようなこと――例えば怠惰、嘘、怒りなどは簡単にできてしまう。しかし、真に自分のためになる善き行いは、努力と忍耐を要し、極めて実行しがたいものである。


■解釈と現代的意義

この偈は、人間の「自然な傾向」が必ずしも正しい方向に向かうものではない、という仏教の厳粛なリアリズムを示しています。悪習・逃避・自己欺瞞などは放っておけばどんどん行いやすくなりますが、倫理的成長や精神的進化には強い意志と不断の努力が必要です。

「善は難し」「徳は険し」という普遍的な法則を、現代の我々も肝に銘じるべきです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用例
意思決定と安易さ楽な選択(隠蔽、責任転嫁、短期的利益)ほど危険であり、本当に組織のためになる判断は多くの困難を伴う。
リーダーシップ部下や後輩に対して迎合しやすいが、真に育てるためには言いにくいことも伝える勇気が必要。
自己成長トレーニング・反省・地道な努力などは続けにくいが、習慣化すれば大きな成果をもたらす。
倫理と継続誠実・透明性・公正といった価値は、維持し続けるのが難しいが、信頼の基盤となる。

■心得まとめ

「悪は易く、善は険し――だからこそ、歩む価値がある」

人間の本性は、怠惰や欲望へと流れやすい。だが、それに流されず「善きこと」「価値あること」に向き合う姿勢こそが、自他ともに幸せに導く道である。ビジネスでも人生でも、「楽だから」という理由で選んだ道は、遠回りとなることが多い。険しくとも意味のある道を選ぶ――その決断が、未来を変える。


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