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■原文(日本語訳)
まだ善い報いが熟しないあいだは、善人でもわざわいに遇うことがある。しかし善の果報が熟したときには、善人は幸福に遇う。
(『ダンマパダ』第九章「悪」第120偈)
■逐語訳(一文ずつ訳)
- まだ善い報いが熟しないあいだは、善人でもわざわいに遇うことがある。
→ 善行を積んでいる人でも、すぐにはその結果が現れず、一時的に苦難に直面することがある。 - しかし善の果報が熟したときには、善人は幸福に遇う。
→ 時が来て善行の結果が実ると、善人には相応しい喜びと幸福が訪れる。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
善い報い | 善行に対して返ってくる良い結果。心の平安、人からの信頼、良縁など。 |
熟す | 時間をかけて結果として現れること。因果の作用が顕在化すること。 |
善人 | 思いやり・誠実・正直・他者への配慮を持ち、善を実践する人。 |
わざわい | 一時的な困難、不遇、苦しみ。 |
幸福(スカ) | 心の平穏、満足、長期的な安心と喜び。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
善行を積んでいるにもかかわらず、人生が困難に見舞われることがある。だがそれは、善の果報がまだ熟していないだけのことである。やがてその善行は、時とともに大きな幸福となって実を結ぶ。
この偈は、善が報われるには時間がかかること、そして「今が苦しいからといって、善が無意味なのではない」という真理を教えている。
■解釈と現代的意義
人はしばしば、「なぜこんなに真面目に頑張っているのに報われないのか」と苦しむことがあります。正直者が損をするように見え、不正が栄えるように見える――そんな社会の不条理に直面したとき、この偈は深い慰めと信念を与えてくれます。
ブッダは説きます。「善の果は、静かに、しかし確実に熟していく」と。今はまだ土の中かもしれないが、善行は必ず花を咲かせる。だからこそ、信じて続ける価値があるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
テーマ | 応用解説 |
---|---|
長期的信頼の構築 | 誠実な対応や地道な努力は、短期的には評価されにくくても、いずれ信用資産として大きく返ってくる。 |
逆境期の判断力 | 困難に直面したときでも「だから善をやめる」のではなく、「この善を育て続ける」覚悟が真の価値を生む。 |
リーダーの姿勢 | 部下への思いやりや正義感は、一時的に誤解されることもあるが、やがて深い敬意と帰属意識に変わる。 |
持続的成長の原則 | 善き企業文化の形成には時間がかかる。しかし、これを信じて継続すれば、最も強固な組織力となる。 |
■心得まとめ
「善の果は、ゆっくり育ち、深く根づく」
善を尽くしていても報われない日々にこそ、この教えを思い出したい。
今が苦しいからといって、善が無駄なわけではない。
むしろその苦難のなかに、善の芽が静かに育っている。
信じて善を続けよ。果報は、必ず時とともに現れる。
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