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正しく行わねば、善行も刃となる


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■引用原文(日本語訳)

矢でも、とらえ方を誤ると、手のひらを切るように、修行者の行も、誤っておこなうと、地獄にひきずりおろす。
―『ダンマパダ』第11章 第4偈


■逐語訳

  • 矢でも、とらえ方を誤ると、手のひらを切るように(kaṭhinaṁ upādāya bāḷhaṁ bhindati):硬い矢を正しく扱わなければ、それが手を傷つけるように、
  • 修行者の行も(samaṇassa dhammam):修行者の規律や修行の道(法)も、
  • 誤っておこなうと(duṭṭhullam upagamma):誤解したり、誤用したりすれば、
  • 地獄にひきずりおろす(nirayaṁ uppajjati):かえって悪しき結果(地獄)に堕ちる原因となる。

■用語解説

  • 矢(kaṭhinaṁ):ここでは比喩。正しく使えば役に立つが、誤れば危険な道具の象徴。
  • 修行者の行(samaṇassa dhamma):修道者の実践、または仏教の教え・道(ダンマ)。
  • 誤って行う(duṭṭhulla):形式だけを真似し、内実や理解を伴わない実践。
  • 地獄(niraya):仏教で説かれる最も苦しい世界。ここでは「極めて苦しい結果」や「精神的破滅」を象徴。

■全体の現代語訳(まとめ)

どんなに優れた教えや修行であっても、それを誤って理解し、誤った動機で実践すれば、自らを傷つけ、かえって破滅の道に進むことになる。仏陀は「正しく使うこと」の重要性を、鋭い矢を例に挙げて説いている。


■解釈と現代的意義

この偈は、知識・技術・善行といった一見“善きもの”であっても、それをどう用いるかが重要であることを強く説いています。宗教的実践はもちろん、倫理・制度・ビジネス戦略も、正しく理解せずに用いれば、かえって人を傷つけ、組織を危うくする凶器になりうるという警鐘です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点現代ビジネスでの適用例
マネジメントの危険性権限や制度を正しく理解せずに使えば、部下のモチベーションを奪い、チームを崩壊させる。
倫理とコンプライアンス法律やルールを都合よく解釈し、自社に有利なように“利用”すれば、社会的信頼を失い、崩壊につながる。
専門知識の誤用高度な知識やスキルも、動機や使い方を誤れば他者を傷つけ、企業リスクとなる。
善意の押しつけ“良かれと思って”の行動でも、相手の状況を理解せずに行えば、反感や混乱を招く。

■心得まとめ

「誤った善は、刃よりも鋭い」

良き教えや行いであっても、それを正しく理解せず、我欲や傲慢のもとに使えば、かえって他者と自分を深く傷つけてしまう。
それはまるで、矢を誤って握って自らの手を切るようなもの――仏陀のこの言葉は、知識・制度・信念に対して謙虚な姿勢を持つことの大切さを教えてくれます。


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