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■引用原文(日本語訳)
「不適切な場所と時間において、不適切な受者に対し、敬意を表さず、軽んじて与えられる布施は、暗質的な布施と言われる。」
――『バガヴァッド・ギーター』第17章 第22節
■逐語訳
正しくない場所や時間(アデーシャ・カーレ)、
施しにふさわしくない人(アパートレ)に対して、
敬意なく(アスラッダーヤ)、無礼に(アヴァジニータム)与えられる布施は、
暗質的(タマサ)な布施とされる。
■用語解説
- 不適切な場所と時間(アデーシャ・カーレ):時機や環境をわきまえず行う施し。混乱の中、または無意味な場面で行われるもの。
- 不適切な受者(アパートレ):施しを受ける資格がなく、悪用する可能性のある人物。浪費家・無責任な者など。
- 敬意を欠いた施し(アスラッダーヤ):義務的で冷たく、内面に誠意や信仰心がない態度での施し。
- 軽んじて与える(アヴァジニータム):相手を見下したり、無礼な態度で与えること。傲慢な与え方。
- 暗質(タマス):無知、怠惰、乱雑、冷酷などの精神性を表す性質。
■全体の現代語訳(まとめ)
施しをする際に、時や場所をわきまえず、相手も適切でなく、
しかも誠意や敬意を欠き、見下したような態度で与えられる施しは、
暗質的(タマス)な布施と呼ばれ、魂の向上につながるどころか、
徳を損ない、心の濁りを深めるものとされる。
■解釈と現代的意義
この節は、「与える側の“態度”と“判断力”が問われている」ことを明確に教えています。
どれだけ多くを与えたとしても、相手を見下して与えたり、相手がそれを必要としないのに押し付けたりする行為は、実は傲慢で自己満足的であり、霊的にも徳を損なうと説かれています。
形式や金額ではなく、思いやりと慎みがあるかどうかが、布施の質を決めるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
支援やアドバイスの在り方 | 相手の状況や準備が整っていないのに助言や物を与えると、迷惑になったり、逆効果になる。タイミングと相手の成熟が重要。 |
上から目線の支援 | 「施してやっている」という態度での教育・援助・支援は、相手の尊厳を傷つけ、信頼関係を壊す。 |
制度の乱用 | 寄付・サポート制度を、意図や対象をよく考えずに運用すると、誤用・悪用され、組織の理念を損なう。 |
社外貢献活動 | ボランティアや社会貢献活動も、誠意と配慮なく実施すると、自己満足・誤解・反発を招く恐れがある。 |
■心得まとめ
「施しは、量より敬意で価値が決まる」
不適切な相手・場・時に、見下すような態度で行われる施しは、
見た目は「善行」でも、**実質は魂を濁す“暗質の布施”**である。
ビジネスにおいても、人に与えるときこそ、敬意と配慮と謙虚さが問われる。
それが本当の意味での「人を支える力」であり、組織の品格をつくる。
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