目次
📜引用原文(日本語訳)
第六十偈
池に生える華をば、水にもぐって折り取るように、
すっかり貪ぼりを断ってしまった人は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が古い皮を脱皮して捨て去るようなものである。
― 『ダンマパダ』 第二章 第六十偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 池に生える華をば、水にもぐって折り取るように:
深く静かな内省の中で、貪欲の根を見つけ出し、断ち切る姿を象徴している。 - すっかり貪ぼりを断ってしまった人は:
物質や感覚への執着を完全に手放し、心の自由を得た修行者。 - こなたの岸を捨て去る:
煩悩と執着に満ちた現世を超越し、悟りの世界(彼岸)へ至ること。 - 蛇が古い皮を脱皮して捨て去るようなもの:
過去の欲望に縛られた自我を脱ぎ捨て、新しい自分に生まれ変わる過程。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
貪ぼり(タンハー) | 仏教における三毒のひとつ。欲望・執着・もっと欲しいという心の癖。 |
華を折る | 内省と智慧によって、煩悩を見つけて取り除く行為の象徴。 |
こなたの岸 | 現世・欲界。苦悩と執着の満ちた世界。 |
脱皮する蛇 | 古い自我から解放される変容と再生の比喩。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
人の心には、
物への執着や欲望が静かに根を張っている。
それを、
水底の華を見つけて摘むように、
深い自己観察で見つけ出し、断ち切った者は、
もはやこの世の束縛を超えて、
清らかな彼岸に向かうのである。
まるで、
蛇が古い皮を脱ぎ捨てるように――
軽やかに、自由になって。
🧠解釈と現代的意義
この偈は「欲を満たすこと」ではなく、「欲を超えること」が真の自由であると説きます。
「もっと稼ぎたい」「もっと認められたい」「もっとモノが欲しい」――
これらの欲望は、人の動機を生む一方で、終わりのない苦しみの源でもあります。
「欲を満たす者は一時の満足を得る。欲を捨てる者は永遠の平安を得る」
現代社会では「欲望」が正義とされることもありますが、
仏教はそれを超えたところにこそ、真の満足と平穏な心があると語っています。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
物質主義の見直し | 報酬や地位を追い求めるばかりでは、内面の安定は得られない。心の豊かさを育てる働き方が必要。 |
目的と手段の再確認 | 利益や成果ばかりにとらわれず、ミッションや価値観に基づく意思決定を。 |
断捨離と集中 | 物・情報・人間関係の「貪り」を捨てることで、より本質的な仕事に集中できる。 |
マネジメント | 部下の欲望を煽るのではなく、満たされている状態を作るリーダーが求められる。 |
✅心得まとめ
「満たすより、手放せ」
渇きを抱えた心に、水を注ぎ続けても、
その器に穴があいていては、永遠に満たされることはない。
渇きを止める唯一の道は、
「足るを知ること」と「執着を手放すこと」。
貪りの皮を脱ぎ捨てよ。
そのとき、あなたは軽やかに、静かに、自由になるだろう。
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