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高きを望まず、まず足元を正す


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■引用原文(『中庸』第十六章)

君子之道、辟如行遠必自邇、辟如登高必自卑。
詩曰、「妻子好合、如鼓瑟琴。兄弟既翕、和楽且耽。宜爾室家、楽爾妻帑」。
子曰、「父母其順矣乎」。


■逐語訳

  • 辟如行遠必自邇、登高必自卑:君子の歩むべき道は、遠くへ行くにはまず近くから始めるように、高く登るにはまず低いところから始めるようなものだ。
  • 妻子好合…和楽且耽:詩経には「妻子がよく和し、琴瑟を奏でるように調和し、兄弟も仲良く、和やかに楽しんでいる」とある。
  • 宜爾室家、楽爾妻帑:家庭を整え、妻子を喜ばせることが大切とされている。
  • 父母其順矣乎:孔子は「これならば父母も満足してくださることだろう」と言った。

■用語解説

  • 邇(ちかし)/卑(ひくし):近く・低いところ。物事の始まりを示す。
  • 琴瑟(きんしつ):伝統的な弦楽器。夫婦の和合の象徴として用いられる。
  • 翕(きゅう):兄弟がむつまじく一致している様子。
  • 順(じゅん):ここでは「親が満足すること」「悦び従う心」と解される。

■全体の現代語訳(まとめ)

孔子は説く――
君子が実践する「道」とは、遠大な理想を掲げる前に、まず目の前の近いこと・低いところから始めることが重要である。
家庭や人間関係の中での実践がなければ、どれだけ高邁な理念を語っても意味はない。

『詩経』には、夫婦が琴と瑟のように調和し、兄弟がむつまじく楽しみ、家庭が整えられて子供たちも幸せになる様子が描かれている。
孔子はこれを見て、「こうして親が満足してくれるような家庭が築けてこそ、道の出発点としてふさわしい」と述べた。


■解釈と現代的意義

この章句は、「高い志は、まず低いところから築かれる」という原則を明示しています。
特に、君子の徳や中庸の実践は、家庭・家族関係という最も基本的で私的な場から始めなければならないとされます。

  • 道の始まりは、夫婦・兄弟・親子の和にある
  • 遠く高くを目指すには、まず身近な基盤を固めるべき
  • 「家庭が安らぎの場であること」は、社会に徳を広める第一歩である

これは、現代においても倫理の実践は生活の中にあるという大切な原理です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用例
リーダーシップの土台組織運営も「近きから始める」。まずチーム内の信頼・対話・調和を築くことが第一歩。
キャリア形成大きな成果を急がず、まず身近な課題や日々の業務に誠実に取り組むことが、自信と実力につながる。
人間関係社会的成功よりも、身近な人(家族・同僚)との信頼関係を大切にすることで、結果的に広い人間関係にもよい影響を与える。
サステナブル経営外部環境へのアピールよりも、まず「社内の幸福感や満足度」を整えることで、自然と好循環が生まれる。

■心得まとめ

「道は、まず足元から。家を治めて、国を治む」

高い理想や成功を追い求める前に、近くて身近なところから徳を築いていくこと
家庭の和は、社会の和の縮図。君子の道は、最も私的な関係において真摯であることから始まる
遠きを行く者は、まず邇(ちか)きを慎め――それが中庸の道であり、人生の礎である。


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