簿記の実務では、取引を記録する際に「仕訳」と「転記」のステップを踏むことが基本です。
これにより、企業の財務状況や経営成績を正確に把握しやすくなります。
本章では、それぞれの手順とポイントを詳しく解説します。
仕訳とは
仕訳は、取引を特定のルールに基づいて勘定科目と金額に分け、記録する簿記の基本的な手法です。取引を「借方(左側)」と「貸方(右側)」に振り分けることで、一目で影響範囲を把握できるようにします。
仕訳の流れ
仕訳を行う際の基本的な手順は次の通りです。
- 取引の要素(5要素)を選択する
取引が資産、負債、資本、収益、費用のどれに該当するかを判断します。 - 要素の増減を判断する
各要素が増加したのか減少したのかを考えます。 - 適切な勘定科目を選択する
取引に該当する勘定科目を選び、仕訳を完成させます。
仕訳の記録例
資産の増減
資産は貸借対照表の借方(左側)に記載されます。
- 増加時: 左側(借方)に記入
- 減少時: 右側(貸方)に記入
例: 商品を販売し、現金100円を受け取った場合
- 借方: 現金 100円
- 貸方: 売上 100円
費用の増減
費用は損益計算書の借方(左側)に記載されます。
- 増加時: 左側(借方)に記入
例: 広告宣伝費100円を現金で支払った場合
- 借方: 広告宣伝費 100円
- 貸方: 現金 100円
負債の増減
負債は貸借対照表の貸方(右側)に記載されます。
- 増加時: 右側(貸方)に記入
- 減少時: 左側(借方)に記入
例: 銀行から現金100円を借り入れた場合
- 借方: 現金 100円
- 貸方: 借入金 100円
仕訳のルール
- 借方と貸方の金額は必ず一致する。
- 複数の勘定科目を用いる場合、順序は自由。
転記とは
仕訳帳に記録した取引内容を、各勘定科目ごとに集計し整理する作業を「転記」と呼びます。転記先は、総勘定元帳に設けられた各勘定口座です。
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転記の目的
仕訳帳には取引が発生した順に記録されるため、現時点での各勘定科目(現金、売掛金など)の金額を把握しづらい場合があります。
そこで、勘定科目ごとに取引内容を整理・集計することで、財務状況を簡単に把握できるようにします。
転記の仕方
仕訳内容を総勘定元帳の勘定口座に転記する際の基本手順は次の通りです。
- 仕訳の借方・貸方を確認する
- 借方に記載された内容は、総勘定元帳の借方(左側)に転記。
- 貸方に記載された内容は、総勘定元帳の貸方(右側)に転記。
- 日付を記入する
取引が発生した日付を記載します。 - 相手科目を記入する
仕訳の逆側に記載されている勘定科目名を記入します。 - 金額を記入する
該当する金額を転記します。
転記の例
仕訳: 銀行から現金100円を借り入れた場合
- 借方: 現金 100円
- 貸方: 借入金 100円
転記:
- 現金口座(総勘定元帳)
借方: 12月1日 借入金 100円 - 借入金口座(総勘定元帳)
貸方: 12月1日 現金 100円
仕訳と転記の重要性
仕訳と転記は、企業の財務記録を整理する基本プロセスであり、正確な財務諸表作成の土台となります。これらを適切に実行することで、企業は健全な財務運営と透明性のある報告を実現できます。
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