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資金音痴:設備投資計画における課題

資金管理は、企業経営における最も重要な要素の一つである。損益が黒字でも資金がショートすれば倒産するという現実が、資金の絶対的な重要性を物語っている。

しかし、多くの企業では資金管理が経理担当者に任され、社長や各部門が「資金音痴」になっているケースが少なくない。

この記事では、資金管理の本質や現場で直面する課題、そしてその解決に向けた具体的な取り組みについて詳しく探る。

目次

設備投資計画における課題と対応策

ある企業の設備投資計画は、都市計画による工場移転がきっかけで大規模な拡張へと進んでいきました。工場や倉庫の建設にとどまらず、体育館や独身寮、さらには複数の社宅までもが新設されました。しかし、補償金だけでは賄いきれず、銀行から多額の融資を受ける事態に陥りました。

さらに、経営者は第二次計画として、最新鋭機械の導入、倉庫の増設、本館の新設といったさらなる投資を推進。さらには装飾性の高い塀の建設まで提案し、その規模は拡大の一途をたどりました。

資金不足という明確な課題

経理担当の常務は、現状の資金不足を理由に第二次計画の見送りを提言しました。その内容は次の通りです:

  1. 倉庫は現状で対応可能。
  2. 新鋭機械の導入は控え、外注工場を活用。
  3. 本館の建設は見送り、既存工場の一部を利用。
  4. 塀の建設は有刺鉄線で代用。

この提案には合理性がありましたが、経営者は「資金の調達は自分が行う」と主張し、常務の意見を取り入れようとしませんでした。

計画全体の見える化

このような状況を打破するため、私は経営者に対して、すべての設備計画を書き出し、それぞれの投資額を見積もることを提案しました。このデータを基に「見積資金運用表」を作成し、具体的な数字として資金の必要額を可視化しました。

その結果、以下の事実が浮き彫りになりました:

  • 計画に必要な長期借入金は、経営者の想定を大幅に超える規模。
  • 借入金の負担が事業運営に及ぼす影響が大きいことが判明。

経営者の意思決定

資金運用表を目の当たりにした経営者は、計画のスケールの大きさに驚愕。「こんなにかかるとは思っていなかった」と述べ、第二次計画の延期を決断しました。これにより、以下のような変更が行われました:

  • 第二次計画を当面見送り。
  • 塀の建設も有刺鉄線で代用。

経営者はこれらの決断を下した後、冗談を交えながら計画の見直しに納得感を持ち、場の雰囲気も和やかになりました。

教訓:数字で示すことの重要性

このケースから明らかになったのは、設備投資計画を進める際に「見える化」がいかに重要であるかという点です。計画を具体的な数字として整理し、長期的な資金運用のシミュレーションを行うことで、経営者はより現実的な意思決定が可能になります。

まとめ

設備投資計画を推進するうえで、情熱やビジョンだけでなく、綿密な資金計画が不可欠です。具体的な数字に基づく分析と、それに基づく柔軟な意思決定が、企業の健全な成長を支える鍵となります。この事例は、経営者が感覚的な判断に陥るリスクを避け、データを活用した戦略的なアプローチを取る重要性を示しています。

資金運用は事業経営の核であり、経営計画を達成するための基盤である。

社長や経営陣が「資金音痴」から脱却し、会社全体で資金運用に取り組む姿勢を持つことが、企業の成長と安定を支える要因になる。

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