最初に手を付けるべきは固定資金だ。何よりも優先し、必ず確保しなければならないのが固定資金の余裕である。これは資金運用の「基本中の基本」であり、全ての土台となるものだ。(なお、この土台を支える「基礎」は利益である)
固定資金余裕が「赤字」になると、その不足分が運転資金を侵食し、結果的に運転資金が圧迫される。こうした状況は資金繰りを一気に危機的な状態へと追い込む要因となる。
固定資金余裕を確保するための方法は二つある。一つは支出の用途を制限すること、もう一つは新たな資金源を確保することだ。この二つを組み合わせることで、安定した資金運用の基盤を築くことができる。
まずは使途の側面から考えてみよう。前期の利益金処分や当期の予定納税によって、前期経常利益の実に「4分の3」に相当する資金が消えていくことに気づくはずだ。この現実が、固定資金余裕を圧迫する大きな要因の一つとなっている。
さらに問題なのは、経常利益の大半が現金以外の形で存在しているにもかかわらず、前期利益金処分や当期予定納税は全額現金で支払わなければならない点だ。このミスマッチが、資金繰りを一層困難にする要因となっている。
ただし、前期に予定納税を支払った分だけは控除される。しかし、もし利益がほとんど出ていなかった会社が急に大幅な経常利益を計上すると、予定納税がなかった分、その資金負担が一気に全額のしかかる。この結果、資金繰りが突如として厳しい状況に追い込まれることになる。
「大幅な利益を急に計上すると資金繰りが苦しくなる」という、一見すると矛盾した現象が起こるのは、このような理由が背景にあるのだ。
次に挙げられるのが長期借入金の返済だ。これは、過去の設備投資の「後始末」とも言えるものだ。もし設備投資が放漫に行われていた場合、その返済負担は何年にもわたり固定資金の使途として重くのしかかる。この結果、固定資金余裕が削られ、最終的には資金繰りを圧迫する要因となる。
さらに、設備投資は一度実行してしまえば、資金的には取り返しがつかない性質を持つ。前期に行った設備支出の決済も、長期借入金の返済と同様に、過去の設備投資の「尻拭い」に他ならない。これが資金繰りに与える影響は避けられないものだ。
ここで注目すべきなのは、前期利益金処分から前期設備支出決済までにかかる固定資金が、「今期の統制不能資金」に該当するという点だ。これらはすでに発生しており、今期の裁量では変更できない固定的な資金負担となる。
つまり、固定資金の使途をコントロールするためには、当期の設備投資やその他の支出を慎重に管理する必要があるということだ。これが、設備投資に対して慎重な姿勢を求められる理由の一つであることが明確になるはずだ。
これは、N社で経営計画の立案をサポートした際の話だ。N社は長期にわたり高収益を維持してきた優良企業であり、その実績から経営計画も非常に意欲的なものだった。特に、積極的な設備投資を前提とした計画を打ち出していた。
計画が進み、最後に資金運用計画の段階に入った。前期利益金処分、当期予定納税、長期借入金返済といった項目を一つずつ確認していくうちに、社長はそれらの金額が自分の想定を遥かに超えていることに驚きを隠せなかった。
これらの資金が一度に必要になるわけではない。たとえば、法人税は多くの場合分納が可能であり、配当金や役員賞与は上半期に支払われる。一方、予定納税は下半期に支出されるため、資金の流出は時期によって分散される構造になっている。
分散していたために普段は目立たなかった金額が、資金運用計画表で1年分まとめて表示されたことで、その全体像が一気に明らかになり、社長を驚かせたのだ。社長はこう言った。「全く驚いた。まさかこんなに多くの資金が必要だとは夢にも思わなかった。それと同時に、これまで多くの利益を出してきたにもかかわらず、なぜ資金繰りが楽にならなかったのか、その理由もよくわかった。これでは、今年の設備投資はもっと控えめにしたい」と。
私は、「社長、少しお待ちください。不急不要の設備投資なら話は別ですが、社長にはそれ相応の構想があるはずです。資金運用全体を見渡した上で、改めて検討していただきたいと思います」と申し上げた。
資金運用を把握しないまま過大な設備投資を行うのは問題だが、一方で、必要資金の大きさに驚いて本当に必要な設備投資を控えるのも誤りだ。そのためには、社長の構想とそれに伴う資金の流れを十分に検討する必要がある。それこそが資金運用計画の本質だ。要するに、使途と資金源のバランスを慎重に見極め、適切な判断を下すことが求められるのである。
固定資金の源泉について考えると、最も重要でありながら、最も不安定な要素は当期経常利益だ。もし経常利益が利益計画の目標額を下回ると、その差額分だけ固定資金余裕が減少することになる。そして、この減少分は運転資金の源泉にも直接影響を与え、運転資金が不足する一因となる。
ある社長は、「一倉さん、どうしても経常利益目標を達成しなければならないと強く感じました。資金運用計画を通じてその決意を新たにしました」と語った。しかし実際のところ、経常利益目標は多くの場合、意欲的に設定されるため、実績が目標を下回る可能性の方が高いという現実がある。
意欲を持つことは素晴らしいことであり、高い目標を掲げることは必要不可欠だ。しかし、その一方で、もし経常利益目標を下回った場合に資金運用をどうするかをあらかじめ考え、対応策を用意しておくことも同様に重要だ。この備えが、企業の安定した経営を支える土台となる。
その備えとなるのが長期借入金だ。たとえ自己資本で賄える余裕があったとしても、それをあくまでクッションとして位置づける方が賢明だ。借りる理由が正当であれば、可能な限り借入れを実行するべきである。こうして固定資金余裕を確保し、文字通り「余裕」として機能させることが、安定的な資金運用の鍵となる。
もう一つ重要なのは、どうしても必要な長期借入金が確保できない場合には、その不足分に応じて設備投資を削減しなければならないという点だ。これは会社の財務的な安全性を守るための不可欠な判断であり、この姿勢を厳格に貫くことが健全な経営の基本となる。
資金の使途と源泉には、このように密接な相関関係がある。左側の源泉が不足すれば、その不足分に応じて右側の使途、特に設備投資を削らなければならない。一方で、右側で設備投資を実行したいのであれば、その分だけ左側の源泉を確保する必要がある。これこそが資金運用の基本原則だ。この原則を無視すれば、待ち受けているのは「破綻」という厳しい現実である。
サンウエーブの倒産は、その典型的な例だ。同社のステンレス製シンク(流し台)は、住宅公団などの指定を受けることで急速に売上を伸ばした。しかし、売上拡大にばかり注力し、資金運用の基本を軽視していたのが問題だった。次々と新しい工場を建設し、そのスピードは常識を遥かに超えていた。この過剰な拡張が、やがて資金繰りの破綻へと繋がったのである。
土地を取得し、工場を建設し、機械を購入して、ひたすら増産に突き進んだ。当初は金融機関からの融資で賄っていたものの、次第にその資金調達も追いつかなくなった。ついには長期資金の裏付けがないまま設備投資を続けるという、極めて無謀な行動に踏み切った。この無計画な拡張が、最終的に破綻を招く大きな要因となった。
長期借入金であれば、返済期間が5年や10年といった長期にわたり、ある程度の返済が進めば新たな借入れを行う余地も生まれる。しかし、長期資金の裏付けがない場合、設備投資の支払いは必然的に手形に頼らざるを得なくなる。このような資金繰りの綱渡り状態が、さらなるリスクを招く要因となる。
当然ながら、5年や10年といった長期の割賦手形を切るわけにはいかず、せいぜい2年から3年の短期手形が限界となる。この手形の決済が固定資金余裕を大幅に赤字へと追い込み、その結果、運転資金に深刻な圧迫をもたらした。これが資金繰りの破綻を加速させた要因の一つである。
運転資金も売上の急増に伴い急激に増加しており、その負担は非常に大きかった。結果的に、資金繰りが完全に追いつかなくなり、ついには資金ショートを引き起こしてしまったのである。
当時の社長である柴崎勝男が、もし資金運用の基本を理解していたなら、あのような無謀な拡張は決して行わなかっただろう。社長が資金運用を知らないことが、どれほど会社にとって致命的であるか――その生きた教訓が、この事例に凝縮されているのである。
固定資金に関する基本的な認識を結論としてまとめると、次の二点に集約される。
- 必要な固定資金余裕を、資金運用計画の段階で確実に確保すること。
- 経常利益目標の未達に備え、必ずクッションを設けること。
これらを徹底することが、安定した資金運用と健全な経営の基盤となる。
運転資金についての検討は、一言でいえば「回転率」の向上に集約される。その中でも特に重要なのが、使途の回転率向上だ。使途の回転率が向上すれば、資金の効率的な運用が可能となり、結果的に運転資金の圧迫が緩和される。これに対し、源泉側は過去の実績や計画に基づいて見積もられることが多いため、使途の改善こそが運転資金管理の鍵となる。
現状のままをそのまま受け入れるのは計画ではなく、単なる成り行き任せに過ぎない。本来の計画とは、現状をどう変え、資金効率を高めるかを具体的に示すものである。それが計画の本質だ。
その結果、L社――従業員900名を抱える自動車販売会社――での事例が挙げられる。ここでも、経理部門と営業部門の間で資金に関する言い争いが絶えなかった。互いに自分に都合の良い主張を繰り返していても解決には至らない。そこで私は、会社全体の資金状況を把握し、改善策を検討すべきだと勧告し、「資金運用予測表」を作成することを提案した。これにより、全体像を明らかにし、議論の基盤を整えることが可能になった。
受取手形と売掛金の残高が非常に大きく、特に受取手形の残高が21カ月分に達していた。当時の業界平均が16カ月であったことを考えると、かなり長期化していることがわかる。その背景には、社長の「受手のサイトは長くても構わない。その代わり売上を伸ばして占有率を上げる」という方針があったため、この状況はある程度やむを得ないとも言える。
しかし、私は「社長の方針を尊重しつつ、受取手形の残高を20カ月以内に抑えることは可能ではないか」と営業所長たちに問いかけた。これに対して、営業所長たちは「それは可能かもしれない」との見解を示し、改善の余地があることを示唆した。
そこで、受取手形の残高を1カ月分削減できた場合、6カ月間でどれほど金利負担が軽減されるのかを、経理担当者に試算してもらった。その結果、約2,000万円の軽減効果が見込まれることがわかった。
さらに、「受取手形1カ月分と同額の売掛金を減らすことは可能か」と尋ねたところ、営業部門からは「受取手形を減らすよりも容易だ」との意見が多数を占めた。これが実現すれば、売掛金削減でも同様に6カ月間で約2,000万円の金利負担が軽減される計算となる。
つまり、受取手形と売掛金のそれぞれを1カ月分ずつ削減するだけで、合計4,000万円の金利負担を軽減できることになる。この金額は非常に大きく、資金運用の改善において重要なインパクトを持つ。
私は、利益は単に売買によるものだけではなく、資金運用の効率化によっても生み出せるものであること、そしてそれは心がけ次第で実現可能であることを営業所長たちに説明した。この考え方に触れた営業所長たちは、「では、この目標に挑戦してみよう」という意見で一致し、資金運用改善に向けた具体的な取り組みを進める決意を固めたのである。
どの会社も、先の例のように簡単に改善できるとは限らない。特にルート・セールスを主体とする場合、取引先の手形サイトはあらかじめ固定されていることが多く、こちらの都合で変更するのが難しい。さらに、取引先の意向次第でサイトを延ばされる傾向が強くなるため、状況をコントロールするのが一層難しいのが現実だ。
だからといって、相手任せにしていては、いつまで経っても運転資金の効率は改善されない。実際、私もかつて会社勤めをしていた際に、資材課長を任された経験がある。そのとき、資金運用や取引条件を見直さずに相手方に委ねてしまうことが、どれほど大きな非効率を生むかを痛感した。状況を変えるには、積極的な関与と改善策の実行が欠かせない。
その当時、支払い条件について厳しく要求してくる会社には、どうしても良い条件で支払いを行っていた。一方で、何も言わない会社に対しては、「あの会社は何も言わないから」という理由で、厳しい要求をしてくる会社への対応分のしわ寄せを回してしまうことがあった。結果として、交渉力のない会社が不利な立場に置かれるという状況が生まれていた。これは資金運用において、条件交渉の重要性を痛感させる経験だった。
だからこそ、支払い条件の改善を得意先に対して根気強く要求することが必要だ。たとえ「うるさく言ったら嫌われるのではないか」「営業に悪影響が出るのではないか」といった弱気な心配があっても、それに囚われてはいけない。たとえ条件改善がすぐに実現しなくても、言うべきことを堂々と主張する姿勢が大切だ。それが信頼を得る土台となり、結果的に会社の資金運用の効率化につながるのである。
特に売掛金の回収に関しては、受取手形と違い、努力次第で改善の余地が大きい。大企業の場合、回収は銀行振込が主流であり、回収に直接的なコストはかからない。しかし、小規模な取引先の場合、集金に足を運ばなければならず、その分、手間や費用がかさむ。こうした状況を考慮しつつ、効率的な回収方法を模索することが、運転資金の効率化に直結する重要な取り組みとなる。
大口の売上に対しては回収費がほとんどかからない一方で、小口の売上ほど回収費がかかるという現実がある。さらに、小さな売上ほど回収費は相対的に割高になるため、全体として資金効率を下げる要因となる。このような構造を見直し、小口取引の回収コストを抑える仕組みを導入することが、資金運用の改善において重要な課題となる。
この点からも、小さな売上は資金効率が悪いと言える。それでも回収できればまだ良いが、実際には集金が行われず放置されるケースも少なくない。こうした未回収が積み重なると、資金繰りに悪影響を及ぼし、結果的に会社全体の運転資金効率をさらに低下させる要因となる。このような状況を放置せず、迅速かつ確実な回収体制を整えることが必要だ。
「忙しい」というのが表向きの理由だが、実際のところ、その多くは「面倒くさい」という本音が根底にある。どんなに熱心に小さな売上を追求するセールスマンでも、いざ代金回収となると手間を惜しむ傾向がある。これではせっかくの努力が報われず、資金運用の悪化を招く。小さな売上ほど代金回収の重要性を認識し、積極的に取り組む姿勢が求められる。
売掛金の回収については、厳格な姿勢で取り組む以外に効果的な方法はないようだ。ただし、単に「うるさく言う」だけでは不十分であり、明確な目標を設定して、それを達成するための指針を与えることが重要である。この目標を具体的に決めるための指標となるのが、資金運用計画だ。計画に基づいて現実的で達成可能な目標を示すことで、組織全体の努力を効果的に方向づけることができる。
受取手形、売掛金、棚卸資産の目標設定と管理方法については、後ほど詳しく触れるとして、ここでは運転資金の源泉について議論を進めることにしよう。運転資金の効率化は、使途だけでなく、その源泉をいかに安定的かつ効率的に確保するかが鍵となる。次の段階では、この源泉の構造と改善策に焦点を当てる。
支払手形と買掛金については、それぞれの回転率をもとに算出された数値を慎重に検討する必要がある。買掛金は基本的に自然発生的に増減する性質があるため、現状の数値を把握することが重要だ。
一方、支払手形の回転率が受取手形の回転率よりも低い場合、それは自社の業績が振るわず、支払い能力に問題があることを示している。この事実を認識することが大切だが、今すぐに劇的に改善できるわけではない。まずは業績を向上させることを最優先課題とし、支払い状況の改善につなげる決意を固めることが必要だ。
割引手形については、まず現在の割引手形が銀行の割引枠内に収まっているかどうかを確認する必要がある。もし枠を超えている場合は、その枠を増大するよう銀行に交渉することが不可欠だ。同様に、短期借入金についても、必要に応じて銀行との交渉を行い、借入れを確保する必要がある。
こうした交渉は、単に資金を確保するだけでなく、銀行との関係性を強化し、今後の運転資金管理をより円滑に進めるための重要なステップとなる。資金源泉の安定化を目指し、計画的に取り組むことが求められる。
割引手形や単名借入れを行う場合、いずれもその「見返り」が必要となる。その見返りとして最も重要なのが固定預金である。通常、割引手形や単名借入れの増加額に対して、固定預金をその3分の1以上確保しておくことが求められるだろう。
この固定預金は、銀行側から見た信頼の象徴であり、融資枠の維持や拡大の交渉を有利に進めるための基盤となる。また、資金の流動性を確保しつつ信頼性を高めることで、安定した資金運用が可能になる。
もし固定預金が必要額の3分の1を下回っている場合、追加で固定預金を増加させる必要が生じる。これはつまり、運転資金を調達するために、逆に運転資金が消耗されるという状況を意味している。
資金運用とは、このように一見矛盾しているような動きが絡み合うものだ。運転資金の効率化を図るには、この仕組みを十分に理解し、無駄を抑えながらバランスを取ることが不可欠である。資金管理における慎重な計画と対応が求められる所以である。
固定資金の使途と同じく、運転資金の使途を減少させるのは非常に難しい一方で、増加させるのは容易だ。これが資金運用の厄介な特徴の一つである。反対に、運転資金の調達は困難であり、やむを得ない場合には支払手形を振り出すことに頼らざるを得なくなる。
しかし、支払手形の増加は、そのまま会社のリスクの増大を意味する。手形の過剰発行は、支払い不能や信用不安を引き起こしかねないため、慎重な資金計画と管理が求められる。このバランスを誤ることが、資金繰りの破綻や経営危機に直結する危険性をはらんでいるのだ。
ここで一つ補足しておきたいのは、資金運用表の形式についてである。一部の資金運用表では、使途と源泉を左右に並べて対比させるのではなく、上下に配置して示す形式が採用されている場合がある。たとえば、上段に資金の源泉、下段に資金の使途を記載するといった形だ。
この形式は、視覚的な比較がやや難しくなる一方で、資金の流れを縦方向に示すことで、より時間軸に沿った理解が得られる場合もある。いずれの形式を採用するにせよ、重要なのは使途と源泉のバランスを明確にし、全体像を把握しやすくすることだ。選択する形式は、会社や用途に応じて柔軟に決めるべきである。
この形式を採用すると、計画を立てにくくなることを意味している。上下に並べる形式では、使途と源泉の対応関係が一目でわかりづらいため、バランスを見極めるのが難しくなるのだ。
さらに、この形式にはもう一つ大きな欠陥がある。それは、「固定資金余裕の絶対額が、最小限どれだけ必要か」という問いに対して明確な答えを導き出せない点だ。使途と源泉を左右に対比させる形式であれば、これらのバランスを視覚的に確認しやすく、絶対額の必要性も把握しやすい。このため、計画の実用性や正確性を重視するならば、左右対比形式が優れているといえる。
以上のような形式でも、慣れれば対応できるかもしれないが、より分かりやすい形式が存在するのであれば、無理に難解な形式を使う必要はない。資金運用表の目的は、使途と源泉のバランスを迅速かつ正確に把握することにある。したがって、会社や関係者が理解しやすく、計画立案がスムーズに進む形式を採用するのが合理的である。形式にこだわるあまり、計画そのものが複雑になり、実行に支障が出るのは本末転倒だ。
資金運用計画を立てることで、長期借入金や短期借入金がどの程度必要かは明確になる。しかし、「その資金が具体的にいつ必要になるのか」というタイミングについては、資金運用計画だけでは把握できない。これを明らかにするのが資金繰計画である。
資金繰計画は、資金の流入と流出のタイミングを具体的に示し、必要な資金を適切な時期に確保するための指針となる。運用計画で見える全体像をもとに、日々や月単位での詳細な資金の動きを把握することで、資金ショートのリスクを回避し、よりスムーズな資金管理が可能になる。
資金運用計画は、会社の財務健全性を確保し、資金繰りの圧迫を回避するための土台となる「固定資金余裕」を確保しつつ、運転資金や長期借入金を効率的に管理するために不可欠です。この計画では、以下の点が重要です:
- 固定資金余裕の確保
資金運用の最も基本的な要素が固定資金余裕の確保です。これが不足すると、運転資金に圧力がかかり、資金繰りが苦しくなります。したがって、固定資金余裕を確保するために、使途の抑制や源泉の確保が求められます。 - 使途の管理
前期利益金処分や当期予定納税は大きな資金負担となり、多くの資金が現金で必要です。長期借入金返済や前期設備支手決済も固定資金の消費要因です。これらの支出を十分に把握し、慎重な設備投資を行うことが重要です。 - 源泉の確保
経常利益の達成が重要ですが、予想より利益が少ない場合に備えたクッションとして長期借入金を活用し、資金余裕を確保します。もし必要な長期借入金が得られない場合は、設備投資を見直すべきです。 - 運転資金の効率化
資金運用計画において運転資金の使途も見直しが求められます。受取手形、売掛金、棚卸資産など、在庫や回収にかかる資金の効率を高めることで、運転資金の使途を抑制します。 - 借入金の計画的調達
短期・長期の借入金は、割引手形や固定預金などの資金源と関連しています。適切な量を確保するために、源泉が十分かどうかを確認し、必要に応じて銀行と交渉する必要があります。 - 資金繰計画の実行
資金運用計画で必要な資金量はわかりますが、具体的にいつ必要になるかを把握するには、資金繰計画を立てることが必要です。これにより、資金が必要となるタイミングを詳細に把握できます。
資金運用計画を通して、資金の使途と源泉のバランスを管理し、会社の安全性と安定性を高める戦略を継続的に見直すことが求められます。
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