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経営計画と資金管理
積極的にバランスシートを作成し、財務分析を行い、それを経営計画書に反映させることは重要です。
しかし、それだけで終わらせるべきではありません。
経営計画書に掲げた目標を実現するためには、具体的な施策が求められます。その中心となるのは「資金管理」です。
資金管理には以下の2つの柱があります:
- バランスシート(期中では試算表)の勘定科目を基準とした月次残高の管理。
- 資金収支を把握しコントロールするための「資金繰り」。
資金管理の課題
資金管理はこれまであまり研究が進んでいない分野であり、「未踏の領域」と言えます。多くの場合、資金管理は経理担当者や資金担当者の専任業務とされ、他部門や経営者の関与が薄い状況にあります。このような体制では、次のような問題が発生します:
- 経営者の資金管理に対する無関心
- 「いつ、いくら足りなくなるか」だけに関心が集中し、不足分の借入れ対応に終始する。
- 固定観念による分業の弊害
- 資金繰表は経理部門が作成するものであり、他部門や経営者が深く理解することなく運用される。
部門間の摩擦
経理部門と他部門の間には、資金管理を巡ってしばしば摩擦が生じます:
- 経理部門 vs 営業部門
- 経理部門:「売掛金の回収を進めてほしい」「現金回収を増やしてほしい」
- 営業部門:「顧客対応を考慮しなければ売上に悪影響が出る」
- 経理部門 vs 購買部門
- 経理部門:「在庫を圧縮し、支払いを抑えてほしい」
- 購買部門:「現金で支払えば仕入れコストが下がる場合もある」
このような部門間の対立は、資金運用の効率を損ない、会社全体の利益を減少させる可能性があります。
資金管理の全社的取り組み
これらの課題を解決するためには、資金管理を経理部門の専任業務から全社的な取り組みに変える必要があります。資金管理を以下のように再構築することが求められます:
- 資金管理の重要性を全社で共有
- 資金ショートのリスクを全社員が理解し、協力体制を築く。
- 経営者の積極的な関与
- 資金繰表やバランスシートの内容を深く理解し、戦略的な意思決定に活用する。
- 部門間の連携強化
- 部門間で資金運用に関する目標を共有し、協力して取り組む。
- 全社的な取り組み: 資金運用は経理部門だけの役割ではなく、会社全体で管理・協力するものだという意識を浸透させる必要があります。
- 部門ごとの役割の理解と調整: 営業、購買、経理など各部門がそれぞれの立場で資金管理に関わり、共同で資金計画を作成・調整することで、経営の健全性を維持します。
- 社内教育: 資金の流れや資金繰りの考え方を社内で共有し、各部門が資金に対する感度を高めることが重要です。
資金管理を全社で徹底することで、資金運用が単なる事務作業ではなく、経営の根幹を支える施策として機能し、会社の成長を支える強固な基盤を築くことができます。
新しい資金管理の実践
未踏の領域である資金管理を開拓し、次のような具体的な運用法を導入することで、効果的な資金運用が可能になります:
- 定期的な資金繰り会議の実施
- 営業部門、購買部門、経理部門が参加し、現状の課題を共有する。
- 資金運用の見える化
- 各部門が資金に与える影響を可視化し、数値で共有する。
- 改善計画の策定と実施
- 資金管理上の問題点を明確にし、具体的な改善施策を実行する。
実行プラン
- 毎月の試算表のチェック: 勘定科目の残高と月次の変動を確認し、計画通りに推移しているかを定期的にチェックする。
- 資金繰り表の活用: 資金繰り表を用いて現金収支の予測を立て、不足する場合にはどのように補うかを検討します。これにより資金ショートのリスクを減らし、適切なタイミングでの資金調達を可能にします。
- 部門間の情報共有と協力: 各部門が資金繰りにどう関与するかを共有し、営業や購買活動が資金計画にどのような影響を与えるかを理解してもらいます。
- 目標管理と改善: 各部門が資金効率を向上させるための目標を持ち、資金の無駄を抑制する。例えば、売掛金の回収期間を短縮すること、棚卸資産を最適化することなどです。
結論
資金管理を全社的な取り組みに変革することで、効率的かつ効果的な資金運用が実現します。経営者が中心となり、各部門が協力して資金運用を改善することで、会社全体の財務基盤を強化し、安定的な成長を目指すことができます。
われわれは、この未開発地帯に鍬を入れ、実りある「耕地」に変えなければならないのである。資金運用を、経理部門だけの孤軍奮闘から、会社をあげての戦いに変えてこそ、初めて効果的な資金運用ができる。
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