目次
🔖 原文(日本語訳)
「岸に下りてゆく階段の整備されている河は楽しい。
理法によってうち克った勝利者は楽しい。
明らかな知慧を得ることは、つねに楽しい。
『おれがいるのだ』という慢心を滅ぼすことは楽しい。」
――『ダンマパダ』第1章「双句品」第24偈
📝 逐語訳
- 岸に下りてゆく階段の整備されている河は楽しい:整えられた導きの道(比喩的な法や修行の道)があることは、人に安心と喜びを与える。
- 理法によってうち克った勝利者は楽しい:力ではなく、正しい道理・戒律・真理に基づいて欲望や怒りに打ち克つことは、真の勝利であり、喜びである。
- 明らかな知慧を得ることは、つねに楽しい:真理に気づき、智慧によって迷いが晴れることは、継続的な喜びをもたらす。
- 「おれがいるのだ」という慢心を滅ぼすことは楽しい:自我(アハンカーラ)への執着を手放すことは、自由への第一歩であり、深い安らぎと解放をもたらす。
🧩 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
階段の整備された河 | 導きのある修行の道筋。比喩として「修行への準備が整っている状態」。安心・明確な方針。 |
理法(ダルマ) | 宇宙の真理、道徳的秩序、ブッダの教え。理にかなった正しい行い。 |
知慧(パニャー) | ものごとの本質を見抜く洞察力。悟りに至るための精神的な光。 |
慢心(アハンカーラ) | 「我」に執着し、自己中心に世界を見ようとする傾向。煩悩の根源。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
導かれるべき道が明確に示されていることは安心をもたらす。
真理に基づいて煩悩に打ち克った人の勝利は、深い喜びをもたらす。
智慧によって迷いが消えることは、いつでも至福である。
そして、自己への執着――「自分こそが」という慢心を滅することは、もっとも深い解放を生む。
💡 解釈と現代的意義
この偈は、人生における四種の深い喜びを語っていますが、それらはすべて**「外ではなく内から来る喜び」**です。
- 導きのある環境を持つこと(準備と安心)
- 道理にかなって困難を乗り越えること(倫理的勝利)
- 本質を理解すること(真の学び)
- 我執を離れること(自由と成長)
これは、**「環境・行動・智慧・心の姿勢」**という四段階の成長の道筋でもあります。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
職場環境 | 明確な手順や理念(階段の整った河)が整っていれば、安心して挑戦できる。 |
課題克服 | 競争や勝利を「道理にかなった方法で成し遂げる」ことが、信頼と真の達成感を生む。 |
学習・知見 | 単なる情報ではなく、「本質を理解する知慧」を得ることが、持続可能な強さとなる。 |
マインドセット | 「自分が中心」という慢心を離れ、チームや社会全体への視点を持つことで、協調と成長が生まれる。 |
✅ 心得まとめ
「準備が整い、正道を歩み、智慧を得て、自我を捨てる――そのとき、人はほんとうに自由になる。」
この偈は、「よき道に導かれ、自ら行動し、知を得て、最後に執着を手放す」ことの四段階を通じて、
人生における最上の「楽しみ」=静かで深い幸福の在り方を教えています。
それはまさに、仏教が目指す解放のプロセスであり、現代人の自己成長にも通じる普遍的な智慧です。
コメント