「創立費」とは、会社を設立するために発生した費用を指します。簿記ではこれを繰延資産として処理し、一定の期間にわたって償却することで費用化します。この記事では、創立費に関連する基本的な定義や仕訳、償却方法について詳しく解説します。
創立費とは?
「創立費」は、会社設立の過程で発生する費用を指します。具体的には、次のような費用が含まれます。
- 定款作成費用
- 登記費用(登録免許税、司法書士報酬など)
- 設立準備費用(会議費、交通費など)
- 設立に関する広告宣伝費
特徴
- 繰延資産として資産計上
創立費は会社設立時に一時的に発生する費用ですが、設立後の事業に長期的に効果をもたらすものとされ、繰延資産として計上します。 - 償却して費用化
繰延資産である創立費は、法定の償却期間に基づき毎期少しずつ費用として計上します。
創立費の仕訳方法
- 創立費の発生時
会社設立に必要な費用が発生した場合は、これを「創立費」として資産計上します。 例:登記費用として50万円を支払った場合
借方:創立費 500,000円
貸方:現金 500,000円
- 償却時
創立費は毎期償却することで費用化します。償却額は法定償却期間または任意の償却基準に基づいて計算します。 例:100万円の創立費を5年間で償却する場合(定額法)
年間の償却額 = 1,000,000円 ÷ 5年 = 200,000円
仕訳
借方:創立費償却 200,000円
貸方:創立費 200,000円
- 全額を初年度で償却する場合
創立費は繰延資産として計上することが一般的ですが、初年度で全額を費用として計上することも認められています。 例:創立費50万円を全額初年度に費用計上する場合
借方:創立費償却 500,000円
貸方:創立費 500,000円
創立費の会計処理のポイント
- 繰延資産としての分類
創立費は、貸借対照表の資産の部(繰延資産)に計上します。 - 償却期間
法定の償却期間はありませんが、税務上では5年以内の任意償却が認められています。実務では、合理的な期間を設定することが重要です。 - 初年度での全額償却
税務上は、初年度での全額償却も可能です。そのため、規模の小さい会社では一度に費用化するケースもあります。
創立費に含まれる費用の具体例
費用項目 | 説明 |
---|---|
定款作成費用 | 公証役場での認証手数料や弁護士・司法書士への報酬 |
登記費用 | 登録免許税、法務局への申請手数料 |
印鑑作成費用 | 会社の実印や銀行印の作成費用 |
設立準備費用 | 設立に関する会議費や交通費、資料作成費 |
広告宣伝費 | 設立に関する新聞広告や告知用の印刷物費用 |
創立費の注意点
- 会社設立後に発生した費用は含まれない
創立費は、設立前に発生した費用に限定されます。設立後に発生する費用(開業準備費用など)は「開業費」として別途処理します。 - 契約書や領収書の保管
創立費として計上するためには、発生した費用の内容を証明する契約書や領収書を適切に保管する必要があります。 - 償却方法の明確化
償却期間や償却方法を会計方針として定め、税務調査で説明できるようにしておくことが重要です。
創立費と他の勘定科目との違い
項目 | 創立費 | 開業費 |
---|---|---|
発生時期 | 会社設立前 | 会社設立後から事業開始前まで |
例 | 登記費用、定款作成費 | オフィス準備費、従業員研修費 |
会計上の処理 | 繰延資産として計上 | 繰延資産として計上 |
まとめ
「創立費」は、会社設立に伴って発生する費用を適切に管理し、償却するための重要な勘定科目です。設立後の事業活動に直接影響を与えるため、会計処理や税務申告での対応を正確に行う必要があります。この機会に、創立費として計上した内容や償却スケジュールを見直し、適切な管理を行いましょう。
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