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意見を求めるなら、問い詰めるなかれ


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真の直言は、寛容の中に生まれる

貞観十八年、太宗は「臣下は往々にして君主の顔色を伺い、甘言をもって取り入ろうとする。私は自らの誤りを正すためにこそ、率直な意見を聞きたい」と側近たちに語った。

しかし、散騎常侍の劉洎は冷静に指摘した――
「陛下は意見が気に入らぬと、時に面と向かって詰問なさる。そうなると、進言者は皆気まずさを覚えて委縮し、真実の言葉は遠のいてしまいます」と。

太宗はこれに深く反省し、「私も問い詰めたことを後悔している。すぐに改めよう」と応じた。

この章が教えるのは、「意見を求める態度」の本質である。
人が安心して意見を述べられる雰囲気――それは理にかなうか否かを問う以前に、尊重と受容の姿勢から生まれる。
詰問や否定からは、沈黙と忖度しか育たない。
リーダーとは、問い詰めずに耳を傾ける覚悟を持つ者である。


出典(ふりがな付き引用)

「人臣(じんしん)の帝王(ていおう)に対(たい)するや、多(おお)くは意(い)を承(う)け旨(むね)に順(したが)い、甘言(かんげん)をもって容(よう)を取(と)る」
「今(いま)、己(おのれ)の過(あやま)ちを聞(き)かんと欲(ほっ)す。卿等(けいとう)皆(みな)直言(ちょくげん)すべし」
「上書(じょうしょ)して旨(むね)に称(かな)わざる者(もの)あれば、或(あるい)は面(おもて)に詰難(きつなん)を加(くわ)う。慙(は)じて退(しりぞ)かざるは莫(な)し」
「非(ひ)直言(ちょくげん)を誘(いざな)うの道(みち)に非(あら)ず」
「我(われ)も亦(また)此(こ)の問難(もんなん)あるを悔(く)い、当に即(すなわ)ち之(これ)を改(あらた)むべし」


注釈

  • 甘言取容(かんげんしゅよう):耳ざわりの良いことを言って、相手に気に入られようとすること。
  • 詰難(きつなん):理詰めで問いただすこと。圧迫的な問い方。
  • 慙じて退く(はじてしりぞく):恥じ入り、場から身を引くこと。
  • 誘直言(ちょくげんをいざなう):率直な意見を言うよう促すこと。

パーマリンク(スラッグ)案

  • foster-honest-counsel(誠実な進言を育む)
  • listen-don't-interrogate(聞け、問い詰めるな)
  • space-for-truth(真実のための余白)

この章は、リーダーシップにおける「意見を受け入れる器の広さ」の大切さを端的に教えてくれます。
建設的な議論には、まず安心して話せる場が必要なのです。

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