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📜 引用原文(『ダンマパダ』第一章 第四偈)
「かれは、われを罵った。かれは、われを害した。
かれは、われにうち勝った。かれは、われから強奪した。」
という思いをいだかない人には、ついに怨みが息む。
――『ダンマパダ』 第一章 第四偈
🔍 逐語訳
- 「彼は私を侮辱した」「彼は私を傷つけた」
- 「彼は私に勝った」「彼は私から奪った」
このような思いを抱かない人は、 - 怨みに縛られることはなく、
- ついにはその怨みが止み、静まる。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
思いをいだかない | 過去の出来事に執着せず、手放すこと。内的な許しや非執着を指す。 |
怨み(うらみ) | 自他に対する怒り・憎しみ・執着。仏教では苦しみの根本因であり、三毒(貪・瞋・癡)の一つ。 |
息む(やむ) | 止まる、消える、静まるという意味。ここでは、心の怒りや苦しみが鎮まることを示す。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
もし誰かに対して、「自分は傷つけられた」「侮辱された」「奪われた」と感じたとしても、その感情を心の中で反復せず、手放すことができれば、怨みという苦しみは自然と静まっていく。
恨みを抱かない人は、その分だけ自由であり、安らぎに近づく。許すとは、相手のためではなく、自分の心の安寧のために行う実践である。
🧠 解釈と現代的意義
この偈は、前の第三偈と対を成しており、「怨みを抱く人は苦しみを手放せない」が、「怨みを抱かない人は解放される」という因果を明示しています。
現代においても、過去の人間関係のしこりやSNSでの炎上、評価の不満など、怒りや恨みは心に巣食いやすいものです。
しかしそれを“考えないようにする”のではなく、“考え続けない”という選択が、心の自由と平和をもたらす鍵となります。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
対人関係の再構築 | 過去の言動を根に持ち続けると、信頼関係は回復しない。忘れる勇気が関係性を再生させる。 |
プロジェクトの遺恨 | 過去の失敗や対立をいつまでも心に留めていては、前進できない。リセットして前を向く姿勢が大切。 |
感情管理力 | 他人の発言・態度を引きずらず、自らの感情の反応を選べるようになると、精神的主導権を取り戻せる。 |
リーダーの器量 | 「水に流す」姿勢を持つリーダーは、チームの不和や個人の過失を許容し、組織全体の成長を促す。 |
🪷 心得まとめ
「許すことは、相手を解放することではなく、自分を自由にすることだ」
恨みを抱かなければ、心は自然と静まり、争いもまた終わる。
真の勝者とは、怒りを抱かぬ者であり、心の中に敵をつくらぬ者である。
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