目次
■引用原文(日本語訳)
第一七章 怒り(二二七)
アトゥラ*よ。これは昔にも言うことであり、いまに始まることでもない。
沈黙している者も非難され、多く語る者も非難され、すこしく語る者も非難される。
世に非難されない者はいない。
*アトゥラ:説法を聞いた在家信者の名前。質問者として登場する。
■逐語訳
- アトゥラよ。これは昔にも言うことであり、いまに始まることでもない。
→ この真理は古くから語り継がれてきたものであり、今に始まったことではない。 - 沈黙している者も非難され、
→ 口を閉じていても「何も言わない」と批判され、 - 多く語る者も非難され、
→ たくさん語れば「うるさい」と批判され、 - すこしく語る者も非難される。
→ 少しだけ語っても「中途半端だ」と言われる。 - 世に非難されない者はいない。
→ この世にあって、一切非難されない者など存在しない。
■用語解説
- アトゥラ:ブッダに質問した在家の信者。ここでは直接的な呼びかけの形で使われている。
- 非難(ニンダー):他人からの批判や否定的な評価。仏教ではそれに対する心の態度が重要とされる。
- 語る(バーチャー):発言や表現のすべてを指す。内容の善悪に関わらず、どのような言動も他者の評価に晒される。
■全体の現代語訳(まとめ)
アトゥラよ、この世の中にはどのように振る舞っても批判を受けるという真理が、昔から変わらず存在している。
何も言わなければ無関心と責められ、多く語れば出過ぎた真似と非難され、少し語れば物足りないと言われる。
どんな人であっても、非難から完全に逃れることはできないのだ。
■解釈と現代的意義
この偈は、「世間の評価に振り回されない強さ」が必要であることを教えています。
他者の批判は不可避であり、それを避けようとすること自体が無意味であるという洞察です。
大切なのは、非難を恐れて自分を失うのではなく、正しいと信じる道を静かに歩み続けることです。
これは、現代におけるSNS批判・風評・評価主義への強い処方箋にもなります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
意思決定とリーダーシップ | どんな決断も全員に好かれることはない。正しいと信じる価値観とビジョンを貫くべきである。 |
自己発信のバランス | 発信しないと「黙っている」と言われ、発信すると「目立ちすぎ」と言われる。だからこそ、信念に従って発信することが重要。 |
他人の評価との向き合い方 | 周囲の評価を参考にしても、最終的な基準は「自分の誠実さ」に置くことが長期的信頼につながる。 |
誹謗中傷耐性 | 批判を恐れて何もしないのではなく、批判を受け入れたうえで、改善点と不要なノイズを見分ける力を持つ。 |
■心得まとめ
「どう生きても批判はある。だから、誠実に生きればよい」
どれだけ慎重に振る舞っても、誰もが賛成してくれるわけではない。
だからこそ、自分の信念・価値観・誠実さをよりどころにし、堂々と自分の道を歩むことが、真の自由と成熟をもたらします。
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