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精神を一つに集中させ、まっすぐに進め

人格を高めたい、真に学問を身につけたいと願う者は、
何よりまず精神を収めて集中し、
その目標に向かって「一本道」でまい進すべきである。

もし「徳を修める」という本来の目的がありながら、
途中で功績や名誉、他人からの評価といった世俗的な関心に心を奪われれば、
真の修養には至らず、表面的な知識や振る舞いで終わってしまうだろう。

また、たとえ多くの書を読んだとしても、
それが風流や趣味のためのものであれば、
その理解は浅く、心の奥深くには決して届かない。

真の学問・修養とは、精神を整え、
人生の芯を一本に定めて、
迷わず力強く歩むところにある。


「学(まな)ぶ者(もの)は、精神(せいしん)を収拾(しゅうしゅう)し、一路(いちろ)に併帰(へいき)することを要(よう)す。
如(も)し徳(とく)を修(おさ)めて意(い)を事功名誉(じこうめいよ)に留(とど)むれば、
必(かなら)ず実詣(じつけい)無し。
書(しょ)を読みて興(きょう)を吟咏風雅(ぎんえいふうが)に寄(よ)すれば、
定(さだ)めて深心(しんしん)ならず。」


注釈:

  • 精神を収拾し一路に併帰する…心を乱さず一つの方向に集中すること。迷わず歩む姿勢。
  • 事功名誉(じこうめいよ)…世俗的な成功・業績・名声など。
  • 実詣(じつけい)…本質的な理解や到達。真に高い修養の境地。
  • 吟咏風雅(ぎんえいふうが)…風流・趣味としての詩文や文芸。学問の本質からそれる方向。
目次

1. 原文

學者收拾精神、倂歸一路。
如修德而留意於事功名譽、必無實詣。
讀書而寄興於吟咏風雅、定不深心。


2. 書き下し文

学ぶ者は精神を収拾し、一路に併(あわ)せて帰すべし。
もし徳を修めんとして意を事功・名誉に留めば、必ず実詣無し。
書を読みて興を吟詠・風雅に寄すれば、定めて心を深くせず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「学ぶ者は精神を収拾し、一路に併せて帰すべし」
     → 学問を志す者は、精神を集中させ、目標を一つに絞るべきである。
  • 「もし徳を修めんとして意を事功・名誉に留めば、必ず実詣無し」
     → もし徳を修めるつもりでいながら、実際には業績や名誉を意識しているのなら、真の成果には至らない。
  • 「書を読みて興を吟詠・風雅に寄すれば、定めて心を深くせず」
     → 読書に励んでいても、その関心が詩や美的情趣ばかりに向いていれば、決して深い思索には至らない。

4. 用語解説

  • 學者(がくしゃ):学問を志す者、学びを深める人。
  • 収拾精神(しゅうしゅうせいしん):気を散らさず、精神を整え集中させること。
  • 倂歸一路(へいきいちろ):志や関心を一つの道に統一すること。
  • 修德(しゅうとく):徳を高めるように努めること。
  • 事功(じこう):世俗的な成果、実績。
  • 名譽(めいよ):他人からの名声・名誉。
  • 實詣(じつけい):本物の境地、真の到達点。
  • 吟咏風雅(ぎんえいふうが):詩を吟じたり、風流を楽しむこと。文学的趣味や感性中心の姿勢。
  • 深心(しんしん):心の深まり。真剣で本質的な探究。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

学問を志す者は、精神を整え集中させ、目標を一つに絞るべきである。
もし徳を修めようとしているのに、世俗的な実績や名誉に意識が向いてしまっているのなら、それでは真に徳を得ることはできない。
また、書を読んでいても、その目的が詩的な情緒や趣味的な楽しみに傾いているようでは、決して本質に迫るような深い理解は得られない。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「学びと修養には集中と純粋な動機が不可欠である」**という強いメッセージを含んでいます。

現代でも、学びや仕事の目的がぼやけ、「評価されたい」「見栄を張りたい」といった動機に流されがちです。
しかし、本当に価値ある成果を得るには、表面的な関心や装飾的な美意識ではなく、純粋な追求心と内面的な集中が必要です。

「一つに集中し、余念を排して、本質に迫れ」
これがこの章句の核心であり、現代にも通じる“学びの鉄則”です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「成果志向」ではなく「本質志向」の育成が重要

社員が自己成長やスキル習得を志すとき、評価や出世だけを目的にしていると、真の力は身につかない。
組織は「何のために学ぶのか」を根本から考える機会を与える必要がある。

● 研修や読書も“風雅”で終わらせない

自己啓発や研修で、インスピレーションだけ得て満足してしまうケースが多い。
しかし、詩的な感動や美的な楽しさに寄りすぎると、実践力や洞察力は深まらない。
読書・学びは、実務に直結する深い理解や応用へと昇華させる必要がある。

● 「集中と絞り込み」が成果の鍵

あれもこれもと広く学ぶよりも、精神を収斂させ、テーマを絞って深く掘り下げることが結果につながる。
プロジェクトも人材育成も、方向性の明確化と集中が必要。


8. ビジネス用の心得タイトル

「一念を貫け──成果より本質に向かう学びを」


この章句は、現代の“目的の分散・動機の迷走”という課題に対し、極めて実践的な洞察を与えてくれる言葉です。
教育・人材育成・自己研鑽を考える上で、非常に有用な内容です。

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