人格を高めたい、真に学問を身につけたいと願う者は、
何よりまず精神を収めて集中し、
その目標に向かって「一本道」でまい進すべきである。
もし「徳を修める」という本来の目的がありながら、
途中で功績や名誉、他人からの評価といった世俗的な関心に心を奪われれば、
真の修養には至らず、表面的な知識や振る舞いで終わってしまうだろう。
また、たとえ多くの書を読んだとしても、
それが風流や趣味のためのものであれば、
その理解は浅く、心の奥深くには決して届かない。
真の学問・修養とは、精神を整え、
人生の芯を一本に定めて、
迷わず力強く歩むところにある。
「学(まな)ぶ者(もの)は、精神(せいしん)を収拾(しゅうしゅう)し、一路(いちろ)に併帰(へいき)することを要(よう)す。
如(も)し徳(とく)を修(おさ)めて意(い)を事功名誉(じこうめいよ)に留(とど)むれば、
必(かなら)ず実詣(じつけい)無し。
書(しょ)を読みて興(きょう)を吟咏風雅(ぎんえいふうが)に寄(よ)すれば、
定(さだ)めて深心(しんしん)ならず。」
注釈:
- 精神を収拾し一路に併帰する…心を乱さず一つの方向に集中すること。迷わず歩む姿勢。
- 事功名誉(じこうめいよ)…世俗的な成功・業績・名声など。
- 実詣(じつけい)…本質的な理解や到達。真に高い修養の境地。
- 吟咏風雅(ぎんえいふうが)…風流・趣味としての詩文や文芸。学問の本質からそれる方向。
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