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固定資産圧縮損とは?概要と会計処理を解説

固定資産圧縮損は、特定の条件下で固定資産の帳簿価額を減額し、その差額を損失として計上する会計処理を指します。主に国庫補助金や保険金を受け取った場合に適用され、税務上の圧縮記帳の一環として行われることが多いです。

この記事では、固定資産圧縮損の基本的な意味、発生する仕組み、会計処理、仕訳例、そして実務での留意点を詳しく解説します。


固定資産圧縮損とは?

固定資産圧縮損は、固定資産の取得や再取得に伴い、その一部を補助金や保険金で賄った場合に、補助金や保険金の金額を帳簿価額から減額することで計上される損失です。

圧縮記帳の目的

  • 国庫補助金や保険金を受け取った場合、その金額を固定資産の帳簿価額から控除することで、将来的な減価償却費を減少させ、税務上の課税所得の増加を避けるため。

適用される主なケース

  1. 国庫補助金を受け取った場合
  • 国や自治体から補助金を受け取って設備投資を行った際。
  1. 保険金を受け取った場合
  • 火災や災害により損壊した資産の再取得時に保険金を受け取った際。
  1. 交換差金を受け取った場合
  • 固定資産を交換し、差額を現金で受け取った際。

固定資産圧縮損の会計処理

固定資産圧縮損を計上することで、補助金や保険金を受け取った金額に対応する固定資産の減価償却を抑制します。この処理は、以下の2つの方法で行われます。

1. 直接減額方式

補助金や保険金の金額を固定資産の取得価額から直接控除します。

2. 積立金方式

補助金や保険金の金額を「圧縮積立金」として処理し、別勘定で管理します。


固定資産圧縮損の仕訳例

例題1:直接減額方式

  • 補助金500,000円を受け取り、1,000,000円の設備を購入した。

仕訳1:補助金受領時

現金 500,000円 / 国庫補助金受贈益 500,000円

仕訳2:固定資産の取得時

機械装置 1,000,000円 / 現金 1,000,000円

仕訳3:圧縮記帳で固定資産の価額を減額

国庫補助金受贈益 500,000円 / 機械装置 500,000円

結果

  • 機械装置の帳簿価額は500,000円に圧縮されます。

例題2:積立金方式

  • 補助金500,000円を受け取り、1,000,000円の設備を購入した。

仕訳1:補助金受領時

現金 500,000円 / 国庫補助金受贈益 500,000円

仕訳2:固定資産の取得時

機械装置 1,000,000円 / 現金 1,000,000円

仕訳3:圧縮積立金を計上

国庫補助金受贈益 500,000円 / 圧縮積立金 500,000円

結果

  • 機械装置の帳簿価額は変わらず1,000,000円ですが、「圧縮積立金」として別途管理されます。

実務での留意点

  1. 税務上の適用要件
  • 圧縮記帳を行うには、補助金や保険金が特定の目的(資産の取得や再取得)に使用されたことを証明する必要があります。
  1. 減価償却の調整
  • 圧縮記帳によって固定資産の帳簿価額が減少するため、将来的な減価償却費も減少します。
  1. 圧縮積立金の管理
  • 積立金方式を選択した場合、「圧縮積立金」の管理と取り崩しのタイミングを適切に行う必要があります。
  1. 会計基準の確認
  • 圧縮記帳の処理は日本の会計基準(税務基準)に基づくものであり、IFRSでは適用されません。

固定資産圧縮損のメリットとデメリット

メリット

  1. 課税所得の調整
  • 補助金や保険金を一時的な収益として計上せず、課税所得を抑えることが可能。
  1. 財務管理の効率化
  • 資産価額の調整により、資産負債のバランスが適切に管理できる。

デメリット

  1. 減価償却費の減少
  • 圧縮記帳により固定資産の価額が減少するため、将来的な減価償却費が減少。
  1. 管理の煩雑さ
  • 圧縮積立金方式を採用する場合、別勘定の管理が必要。

固定資産圧縮損に関する具体例

例:工場の新設

  • 国庫補助金で1,000,000円を受け取り、2,000,000円の工場を建設した場合:

直接減額方式の処理

工場建物 2,000,000円 / 現金 2,000,000円
国庫補助金受贈益 1,000,000円 / 工場建物 1,000,000円

積立金方式の処理

工場建物 2,000,000円 / 現金 2,000,000円
国庫補助金受贈益 1,000,000円 / 圧縮積立金 1,000,000円

まとめ

固定資産圧縮損は、補助金や保険金の受け取りに伴う特定の会計処理であり、固定資産の帳簿価額を調整する重要な手続きです。適切な圧縮記帳を行うことで、税務上の負担を最適化し、正確な財務管理を実現できます。

実務では、税務要件や会計基準を正確に把握し、直接減額方式と積立金方式のどちらが適切かを判断した上で処理を行うことが求められます。

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