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誠の実現は五つの実践と千の努力か」――知恵も力も、地道な積み重ねの末に備わる。


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■引用原文(『中庸』第十一章 第二節)

博学之、審問之、慎思之、明弁之、篤行之。
有弗学、学之弗能弗措也、
有弗問、問之弗知弗措也、
有弗思、思之弗得弗措也、
有弗弁、弁之弗明弗措也、
有弗行、行之弗篤弗措也。
人一能之、己百之。人十能之、己千之。
果能此道矣、雖愚必明、雖柔必強。


■逐語訳

  • ひろく学び、くわしく問うて、慎重に思い、明確に分析し、しっかりと行う。
  • 学んでいないことがあれば、それを学び、できないうちは決してやめない。
  • 問いただしていないことがあれば、それを問うて、理解するまではやめない。
  • 思索していないことがあれば、得心するまではやめない。
  • 弁別していないことがあれば、それを明らかにするまではやめない。
  • 実行していないことがあれば、十分に確かに実行できるまではやめない。
  • 他人が一の努力でできることがあれば、自分は百の努力をする。
  • 他人が十の努力でできることがあれば、自分は千の努力をする。
  • この道を本気で貫くことができれば、愚かな者でも必ず明らかになり、柔弱な者でも必ず強くなる。

■用語解説

用語解説
博学(はくがく)広く知識を収集すること。外からの学びの入口。
審問(しんもん)詳しく問い質すこと。受動から能動の学習姿勢へ。
慎思(しんし)慎重に深く考えること。自己の内面との対話。
明弁(めいべん)論理的に明らかにし判断する力。分析と知恵の働き。
篤行(とっこう)まごころ込めて確実に実行すること。行動の完成。
措(そ)く手放す、諦める。ここでは「中断・やめる」の意味。

■全体の現代語訳(まとめ)

人として「誠」の道を歩むには、広く学び、積極的に問い、慎重に思いを深め、明快に分析して、着実に行動しなければならない。

まだ学んでいないことがあれば、それができるようになるまで学び続ける。
まだ理解していないことがあれば、それがわかるまで質問し続ける。
まだ納得していないことがあれば、それが得られるまで思考し続ける。
まだ区別できていないことがあれば、それが明瞭になるまで見極め続ける。
まだ実行しきれていないことがあれば、それが深く行き届くまで実践し続ける。

もし他人が一度でできることでも、自分は百回やる。他人が十回でできるなら、自分は千回やる。

このような地道な道を本当に貫くことができれば、たとえ愚かでも必ず明晰になり、たとえ弱くても必ず強くなれるのである。


■解釈と現代的意義

この章は「誠の道は天賦の才能ではなく、継続する実践である」という力強いメッセージをもっています。

  • 「誠の人」になるための五段階(学・問・思・弁・行)は、知識だけでなく内省と実践を含んだ人間形成のプロセス。
  • 成功者との差は「才能」ではなく「やめない力」である。
  • 努力を“量”で補えば、能力の“差”は克服できる。

これらは、現代の「成長マインドセット(Growth Mindset)」や「10,000時間の法則」と同様の哲理を含んでいます。


■ビジネスにおける解釈と応用

観点応用例
人材育成「才能ではなく、継続力と誠実さで育つ」ことを念頭に置いた教育制度設計。
PDCAサイクル学び(Plan)、問い(Check)、思考(Analyze)、判断(Decide)、実行(Act)を回し続けることが「誠」を体現する。
リーダーの育ち方一回でうまくいかなくても、自ら100回・1000回と取り組む姿勢が信頼と成果を生む。
自己評価と成長「自分は愚かで弱い」と感じたときこそ、希望がある。なぜなら“果たして此の道を能くすれば”、必ず明るく強くなれるから。

■心得まとめ

「積み重ねこそ、誠の道」

“誠”とは天の道であり、それを実現するには人間としての五つの実践――
学ぶ・問う・思う・見極める・行う
を、どんなに愚かでも、どんなに弱くても、あきらめず繰り返すこと

一を百に、十を千に。
その積み重ねが、「誠」という天の道へ、私たちを一歩ずつ近づける。


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