目次
📜引用原文(日本語訳)
第七六偈
五つの覆いを捨てて、汚れなく、疑いを断ち、煩悩の矢を離れて、
修行僧は、こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
—『ダンマパダ』 第二章 第七六偈
🔍逐語訳とキーワード解説
用語 | 解説 |
---|---|
五つの覆い(pañca nīvaraṇāni) | 心を妨げる5つの障害:①欲望(貪欲)②怒り(瞋恚)③惛沈睡眠(精神の鈍化)④掉挙悪作(落ち着きのなさと後悔)⑤疑(正しい道への不信) |
汚れなく | 煩悩や邪念に染まっていない純粋な心の状態 |
疑いを断ち | 教え・実践・自分自身への不信感を断ち切る |
煩悩の矢 | 煩悩は、心を射抜いて惑わせる「矢」のようなものである |
こなたの岸 | 苦しみや輪廻の世界(迷いの世界) |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
修行僧は、
心を曇らせる五つの覆いを取り除き、
心を澄ませ、疑いの心を断ち切る。
さらに、煩悩という心を貫く矢を抜き去り、
この世の執着から解き放たれる。
それはまるで、
蛇が古い皮を脱ぎ捨てるように、
古い自分を捨て去り、
彼岸(ニルヴァーナ)への道を歩むことにほかならない。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、**「心を覆うものを取り除くことの重要性」**を説いています。
私たちの心は本来、智慧と慈悲に満ちた清らかなものですが、
日々の生活の中で、欲望や怒り、迷い、落ち着きのなさなどによって曇らされます。
これらの「覆い」は、現代の言葉でいえば、
- スマホ依存(気を散らすもの)
- 過去への後悔・未来への不安
- 正しい道に対する疑念や迷い
といった心のノイズともいえます。
これらを一つひとつ取り除くことが、
本当の集中、平静、そして自由を得る道なのです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と実践 |
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集中力と成果 | 五つの覆い(誘惑・怒り・眠気・落ち着きのなさ・疑い)は、仕事の集中を阻害する。マインドフルネスやルーティンを整えることで心を澄ませよ。 |
意思決定 | 判断力を鈍らせる「疑いの心」や「後悔・不安」は、曇ったレンズのようなもの。洞察と直感を信じるには心の浄化が必要。 |
チームマネジメント | 組織内の「怒り」「疑念」「過度の期待」などが澱(おり)となってチームを覆うと、真の力は出せない。リーダーは、これらの覆いを認識し取り除く手助けをせよ。 |
個人の成長 | 自分を縛る「古い殻(思い込み、過去の失敗)」を脱ぎ捨てることが、新たな境地への第一歩。脱皮なくして成長なし。 |
✅心得まとめ
「心を覆う五つの霧を払い、真の自己が姿を現す」
智慧ある生き方とは、
多くのものを手に入れることではなく、
心にかかった覆いを一つひとつ手放していくことである。
欲・怒り・迷い・散漫・疑い。
これらを鎮めたとき、
人はまるで蛇が脱皮するように、
しがらみのない、軽やかな自分へと生まれ変わる。
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