—— 器の大きさにふさわしい役割がある
孔子は、人の能力や適性についてこう語りました。
「君子は細かな仕事が苦手なことがあっても、大きな仕事は任せるに足る人物である。
一方で、小人は大きな仕事は任せられないが、細かな仕事には使うことができる」と。
つまり、人にはそれぞれ向き不向きがあり、それによって果たすべき役割があるということ。
君子は、全体を見渡し大局を動かす責任を担う。
だからこそ、小さな雑務や事務処理を苦手とすることがあっても、それをもって価値を疑う必要はない。
逆に、小人は個々の作業には長けていても、全体をまとめる徳や信頼に欠けることがある。
それぞれの器に応じた役割を果たすことこそ、組織や社会の調和を生むのだ。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、君子(くんし)は小知(しょうち)せしむべからずして、大受(たいじゅ)せしむべきなり。
小人(しょうじん)は大受せしむべからずして、小知せしむべきなり」
注釈
- 「小知」:細かい事務作業や実務、小さな任務。
- 「大受」:大きな仕事を任せられる度量。大義を理解し、全体の判断を託せる力。
- 「君子」:人格・見識・信頼に優れ、組織の中でリーダー的存在となる人。
- 「小人」:自己中心的で全体観に欠けるが、限定的な役割では機能する人物。
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(向き不向きを活かせ)great-minds-focus-big
(大器は小事にこだわらず)assign-by-capacity
(器に応じて任せよ)
この心得は、チームマネジメント・人材配置・自己肯定感などに大きく関わります。
小さな仕事に不向きでも、それを恥じる必要はありません。本来の器にふさわしい場所で力を発揮することこそが、真の貢献なのです。
1. 原文
子曰、君子不可小知、而可大受也。
小人不可大受、而可小知也。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は小(しょう)に知(し)らしむべからずして、大(だい)に受(う)くべきなり。
小人(しょうじん)は大に受くべからずして、小に知るべきなり。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「君子は小に知(し)らしむべからずして、大に受(う)くべきなり」
→ 君子(人格の高い人)は、些細なことを知るのには向いていないが、大きなことを受け入れる器がある。 - 「小人は大に受くべからずして、小に知るべきなり」
→ 小人(器の小さい人)は、大きなことを受け止める力はないが、細かいことをよく知っている。
4. 用語解説
- 君子(くんし):人格者、高い教養と徳を備えた人物。
- 小人(しょうじん):徳や視野に乏しい人物。自己中心的で器が小さい人。
- 小知(しょうち):細かい知識や目先の知恵。即物的・実務的な情報。
- 大受(だいじゅ):大きな方針・道理・理念などを受け止め理解する力。広い器量。
- 〜せしむべからず/べきなり:〜させてはならない/〜するにふさわしい、という古典文法的な命令と適正の表現。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「君子は、細かいことにとらわれるのではなく、大きなこと(理念や道義)をしっかり受け止める器がある。
一方、小人物は、大きなことを任せるには適さないが、細かいことにはよく通じている」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「人物の器の大小と、その役割や適性」**を明確にした教えです。
■ 君子の特性
- 大局を理解する器の大きさが求められる。
- 小さなこと(細かい情報や実務)に過度にこだわるのは本質を見失う可能性がある。
■ 小人の特性
- 広い視野や哲学的・理念的な問題には向かず、実務や細部に関しては力を発揮しやすい。
- その反面、大きな判断や信頼を置くにはリスクがある。
■ 孔子の教訓
- 人材はその器に応じて活かすべきであり、君子は上に立ち、小人は実務に長けた補佐役として適している。
- 役割分担と人材評価の原理を示した教訓でもある。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「リーダーは細部に執着するな、大局を見よ」
細かいマイクロマネジメントに没頭せず、ビジョンや方針を掲げて導くのがリーダーの務め。
◆ 「実務家と思想家の役割を見極めよ」
管理職や経営者が細部にばかり目を向けては、戦略や価値の創出が後回しになる。
逆に、現場の担当者に「抽象論ばかり」を押し付けても非効率。
◆ 「器に応じた適材適所を徹底する」
- 小さなことをよく知る人には、細部管理・事務作業・実行責任のあるポジション。
- 大きな構想・調整・リスク判断には、器の大きな人材を。
◆ 「人材評価における“知の範囲”と“受の容量”を見よ」
どれだけ細かい知識を持っていても、それだけでは上に立つ資質は測れない。
重要なのは、**“どれだけ広く深く受け止められるか”**という器量。
8. ビジネス用心得タイトル
「人を測るのは“知識量”より“器量”──適材適所が組織を強くする」
この章句は、「誰に何を任せるべきか」「リーダーシップとは何か」「人材の真の価値はどこにあるのか」など、現代組織運営においても極めて重要な判断基準を与えてくれます。
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