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煙に覆われても、火は火である


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■引用原文(日本語訳)

「生まれつきの行為は、たとい欠陥があっても、捨てるべきでない。アルジュナよ。
実に、すべての企ては欠陥に覆われているのだ。火が煙に覆われるように。」

(バガヴァッド・ギーター 第18章 第48節)


■逐語訳

  • 人は**生まれつきの行為(スヴァカルマ)**に従って生きるべきであり、
  • たとえそれに欠点や欠陥があったとしても、それを捨ててはならない。
  • なぜなら、あらゆる行為(企て/カルマ)は、火に煙が付きまとうように、
    何らかの不完全さを伴うのが世の常であるからだ。

■用語解説

  • 生まれつきの行為(スヴァカルマ):その人が天性として備えている気質・性格・才能に応じた行動や役割。
  • 欠陥(ドーシャ):未熟さ、ミス、障害など。不完全性。
  • 火と煙:火(行為や才能)には、必ず煙(未熟さ・誤り)が伴うという譬え。
  • 捨てるべきでない:欠点を理由に使命や役割を放棄すべきではない、という教え。

■全体の現代語訳(まとめ)

自分に与えられた仕事や役割には、必ず何らかの欠点や不完全さがあるものだ。
しかしそれでも、自分本来の道は放棄してはならない。
なぜなら、すべての行為は火が煙に覆われるように、
多少の欠点を含んでいるのが自然な姿だからである。


■解釈と現代的意義

この節は、**「完璧でなくても、自分の道をやり抜くことの大切さ」**を教えています。

現代では、完璧主義が多くの人を苦しめます。
自分の能力や仕事に欠点があると、それだけで諦めてしまったり、
「もっと向いている仕事があるかもしれない」と転々とする人もいます。

しかしギーターは、不完全であることを前提として、なお自分の役割を果たせと説きます。
失敗や未熟さをも含めて、それが人間の成長であり、魂の成熟の道なのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点実務での適用例
完璧主義の罠欠点があることを恐れて行動を止めるのではなく、「不完全でも進める」ことを大切にする。
キャリア継続「自分には向いていない」と早期に仕事を投げ出すのではなく、欠点と向き合い、改善しながら続ける姿勢が実を結ぶ。
組織における人材評価欠点の有無ではなく、「どれだけ誠実に役割を果たそうとしているか」を評価基準に含めるべき。
事業遂行すべてのプロジェクトは初期段階で不完全。改善しながら進めるのが本来の道。

■心得まとめ

「火は煙に覆われていても、その本質を失わない。
行為もまた、欠点に覆われていても価値を失わない。」

ギーターは言う――
不完全だからといって、自分の役割を捨てるな。
それを乗り越える中にこそ、魂の炎が燃える。


この思想は、第47節の「自分の義務の尊重」に続き、
**「不完全さの中で完成に向かう道」**をさらに深く肯定するものです。

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