製造業や原価計算の分野では、完成品のみ負担という考え方がよく用いられます。この考え方は、製造原価を完成品のみに分配する方法であり、途中で未完成の製品(仕掛品)には負担をかけない原価計算の方法です。本記事では、完成品のみ負担の概要、計算方法、メリット・デメリットについて解説します。
完成品のみ負担とは?
完成品のみ負担とは、製造過程で発生する原価を完成品のみに負担させる原価配分方法です。これは、仕掛品(未完成の製品)を将来的に完成品として扱う前提で、現時点ではその製品に原価を配分しないという考え方です。
この方法では、以下のような計算が行われます。
- 当月発生した製造原価を計算する。
- その原価を当月中に完成した製品のみに分配する。
- 仕掛品には原価を付けず、次期以降に原価を引き継ぐ。
計算方法の例
例題:
ある工場で次のようなデータがあるとします。
- 当月投入された原材料費:300,000円
- 労務費:200,000円
- 製造間接費:100,000円
- 完成品数量:1,000個
- 仕掛品数量:200個
総製造原価:
[
300,000 \, \text{円} + 200,000 \, \text{円} + 100,000 \, \text{円} = 600,000 \, \text{円}
]
完成品単位原価:
[
\frac{600,000 \, \text{円}}{1,000 \, \text{個}} = 600 \, \text{円/個}
]
この場合、仕掛品に原価は割り当てられず、完成品1,000個分に全ての原価が配分されます。
完成品のみ負担のメリット
- 計算が簡単
- 仕掛品に原価を配分しないため、計算プロセスが簡略化されます。
- 原価の変動を抑える
- 仕掛品が多い場合でも、その月の完成品にだけ原価を負担させるため、計算期間ごとの原価が安定します。
- 実際の完成品に注力
- 完成品を中心にコスト管理を行えるため、原価計算の目的が明確になります。
完成品のみ負担のデメリット
- 仕掛品の原価が不明確になる
- 仕掛品に原価を割り当てないため、その時点での仕掛品の価値が把握しにくくなります。
- 長期的なコスト管理が難しい
- 次月以降の仕掛品の動向に応じて、原価が変動する可能性があるため、長期的な計画に不向きです。
- 在庫評価への影響
- 仕掛品の価値が低く評価される場合があり、財務諸表上の在庫評価額に影響を与える可能性があります。
どのような場面で使うべきか?
完成品のみ負担は、次のような状況で適しています。
- 短期的なコスト分析が必要な場合
- その月の完成品に集中して原価を分析したいときに便利です。
- 仕掛品の価値が相対的に低い場合
- 製造プロセスが短く、仕掛品がすぐに完成品になる場合には効果的です。
- 簡易な原価計算を行いたい場合
- 中小企業や製造量の少ないプロジェクトでは、計算負担を軽減するために用いられることがあります。
まとめ
完成品のみ負担は、製造原価を完成品に集中して配分する手法であり、シンプルな計算方法が特徴です。ただし、仕掛品の原価が把握しにくいというデメリットもあるため、企業の製造プロセスや管理目的に応じて、適切な原価計算手法を選ぶことが重要です。
この方法を正しく理解し、効率的な原価管理を目指しましょう!
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