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資金計画の実践例

ある経営者からの相談で、資金計画の現実的な課題が浮き彫りになりました。

このケースでは、新工場の建設資金をすべて長期借入金で調達し、返済条件も慎重に確認したうえでの投資でしたが、返済が始まると毎月の支払いを大幅に上回る不足資金が発生。

売上が低迷している要因だけでは説明がつかない状況に直面していました。

目次

資金繰りの見通しの欠如

経理担当者から毎月不足金額が報告されるものの、長期的な見通しを示せない状態が続きました。

具体的な資金計画がないままでは、銀行への説明責任を果たせず、信用を失うリスクもあります。これは企業にとって致命的な問題です。

経営者が「今年中にどれくらいの不足が出るのか」と質問しても、経理担当者は「その時点にならないと正確な数字は出せない」と回答。資金計画の曖昧さに対する経営者の苛立ちは増すばかりでした。

問題の根本原因

問題を深掘りすると、資金計画の欠如に加え、以下のような要因が絡んでいることが分かりました。

  1. 手形管理の不備
    売上代金の多くが長期間の分割払いで受け取られ、2,000枚ほどの手形を抱えていたため、資金繰りが複雑化。
  2. 計画と実績の乖離
    「計画と実績を一致させる」という固定観念が強すぎて、資金繰りの実態が正確に把握されていない。
  3. 社員の対応姿勢
    問題解決に取り組むのではなく、「できない理由」を挙げる言い訳が先行。

解決策:資金運用予測表の導入

この状況を打開するため、資金運用予測表を作成。売上収入、支出、返済額、税金、運転資金などをすべて反映させ、長期的な資金計画を明確化しました。

結果、わずか1時間の作業で経営者が自社の資金状況を正確に把握できるようになり、問題は一気に収束しました。

別の相談事例:新ビル建設計画

別の経営者からも、新ビル建設計画についての相談が寄せられました。条件は一見魅力的で、計画には以下のポイントが含まれていました:

  1. テナント収益による費用補填
    新ビルの一部をテナントスペースとして貸し出す計画。
  2. 有利な支払い条件
    建築会社から10年間の割賦返済が提案され、銀行融資より柔軟性が高い。
  3. 業績の好調
    数年間の好調な業績を背景に、積極的な投資が可能と見込まれていた。

しかし、この計画には重大なリスクが見落とされていました。それは、長期的な資金繰りや予期せぬ事態への対応策が不十分であった点です。例えば、借入金の返済が重なり、想定外の資金不足に陥る可能性がありました。

長期的リスクへの対応の必要性

短期的な利益や条件だけに目を奪われず、以下の点を検討する必要があります。

  • 資金繰りの継続的な監視
    定期的な見直しを行い、キャッシュフローを健全に保つ。
  • 予期せぬ事態への備え
    景気変動や市場環境の変化に対応できる余裕を確保。
  • 計画の柔軟性
    固定観念に縛られず、必要に応じて戦略を見直す。

教訓

資金計画は、単なる数字の管理ではなく、経営全体の戦略を支える基盤です。長期的な視点を持ち、現実的なリスクに備えた計画を立てることで、企業は持続的な成長を実現できます。

資金管理を軽視せず、経営者自らが主導して問題解決に取り組む姿勢が、企業の未来を切り開く鍵となるのです。

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