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■引用原文(日本語訳)
「以上、私は秘中の秘である知識をあなたに説いた。これを残らず熟慮してから、あなたの望むままに行え。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第63節)
■逐語訳
- **私は今、**最も深遠で秘密とされる知識(ギューヤートマ・ギャーナ)を
- あなた(アルジュナ)に説き明かした。
- これらを余すところなく熟考し(イダム・ニシュチェータ)、
- そのうえで、あなたが望むままに行動せよ(ヤテチャシー・タター・クル)。
■用語解説
- 秘中の秘(ギューヤートマ):聖典や教えの中でも最も深く重要な部分。霊的真理の核心。
- 熟慮して(ニシュチェータ):鵜呑みにせず、自らの内なる叡知と照らしてよく考えること。
- 望むままに行え(タター・クル):強制ではなく、自らの自由意思による選択と責任に任せるという尊重の表現。
■全体の現代語訳(まとめ)
「私はあなたに、最も深く貴重な知識をすべて語り終えた。
それをよく考え、理解し、
そして、最終的にはあなた自身が選びなさい。
どう生きるかは、あなたに委ねられている。」
■解釈と現代的意義
この節は、指導の完成と自由意思の尊重を同時に示す重要な言葉です。
クリシュナは、全章を通じてアルジュナを導いてきましたが、
ここで初めて彼に最終的な選択の自由を与えます。
これは、「教えを授ける者」と「受け取る者」の本来あるべき関係を体現しています。
つまり、真の教育とは――
「正しい知識を与え、考えさせ、選ばせる」こと。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
リーダーシップの在り方 | 部下に対し、情報や視点を提示した後は、最終決定を委ねることで自律性が育つ。 |
コーチング型マネジメント | 答えを押しつけるのではなく、熟慮を促し、本人に選ばせることで内発的動機が引き出される。 |
意思決定 | 上からの命令ではなく、十分な情報と理解を前提に自ら判断することで、納得感ある行動が可能になる。 |
教育と育成 | 最も大切な知識(価値観や行動原理)は押しつけではなく、伝えた上で「選ばせる」ことが本質。 |
■心得まとめ
「導く者は語り尽くし、選ぶ者は沈黙の中で決断する」
ギーターは静かに締めくくる――
「私は最も深い真理を伝えた。
今、それをどう生かすかは、お前自身が決めること。
自由は選択にあり、選択は責任と共にある。」
この節は、**「悟りの実践は自分の手に委ねられている」**という宣言でもあります。
続く第64節では、再びクリシュナがアルジュナへの深い慈愛と救済の道を語り始めます。
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