目次
■引用原文(日本語訳)
「迷える見解に固執し、自己を苦しめたり他者を滅ぼすために行われる苦行は、暗質的な苦行と呼ばれる。」
――『バガヴァッド・ギーター』第17章 第19節
■逐語訳
誤った理解(ムーデー・グラーヘーナ)にとらわれ、
自己を苦しめ(アートマナハ・ペーダーヤ)、
あるいは他者を傷つけようとして(パリダーピャ・ヤット)、
行われる苦行(タパス)は、
暗質的(タマス)な苦行と呼ばれる。
■用語解説
- 迷える見解(ムーデー・グラーハ):無知や誤解に基づく頑固な信念。思い込みや歪んだ価値観。
- 自己を苦しめる:過度な禁欲や自己否定、無理な努力など、自分を傷つけるような修行。
- 他者を滅ぼす:他者への復讐・マウント・見返し・支配欲などを動機とした行動。
- 暗質的(タマス):無知、怠惰、盲信、破壊性など、混乱と堕落をもたらす性質。
■全体の現代語訳(まとめ)
自分の中にある誤った信念や思い込みに固執し、
その結果として、自分を痛めつけたり、他人を攻撃するような動機で行われる修行や努力――
それは、暗質(タマス)に属する苦行であり、魂の成長どころか堕落につながるものである。
■解釈と現代的意義
この節は、**「努力しているからといって、必ずしも善ではない」**という重大な警告を与えています。
世の中には、努力や禁欲のように見えて、実際には「復讐心」「虚栄心」「自己否定」などに支配されている行動も多く存在します。
ギーターはそれを「暗質の苦行」と呼び、根本的に方向性を誤っている行為であると断言します。
正しい努力とは、「真理・誠実・自他の調和」に基づいたものであるべきなのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
自己犠牲の誤解 | 「自分さえ我慢すればいい」と無理を重ね続ける働き方は、一見美徳に見えても、暗質的であり健康や人間関係を壊す危険がある。 |
復讐やマウントを動機とする努力 | 「見返してやる」「あいつを超える」などの感情からくる努力は、一時的には成果を出しても、精神や関係性を損なう。 |
価値観の誤信 | 誤った思い込み(例:「苦しんでこそ尊い」「仕事とは耐えるもの」)にとらわれると、健全な判断や成長を妨げる。 |
組織文化の歪み | 組織ぐるみで「無理を美徳」とする空気があれば、それは集団的なタマス(暗質)に陥っている状態である。 |
■心得まとめ
「方向を誤った努力は、毒にもなる」
努力や修行が「偉い」わけではない。
何を信じて、どのような動機で行うか――そこにこそ本当の価値がある。
自己否定や復讐心から来る努力は、心身を傷つけ、自他を不幸に導く。
ビジネスにおいても、「思い込みから自由になること」が、健全な自己管理と持続可能な成長の鍵である。
コメント