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■引用原文(日本語訳)
彼らはこの見解に依存し、自己を失い、小知であり、非常に残酷な行為をし、有害であり、世界を滅ぼすために出生する。
(『バガヴァッド・ギーター』第16章 第9節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 彼ら(阿修羅的な者たち)は、前節のような虚無的・唯物的見解に依存し、
- 真の自己(アートマン)を見失い、
- 狭い知識しか持たず、
- 極めて残酷な行為に走る。
- 彼らの存在は有害であり、
- まるで世界を破壊するために生まれてきたかのように振る舞う。
■用語解説
- この見解(イーダム・ドリシュティム):前節で語られた「世界に真理や秩序はなく、すべては欲望の産物」とする唯物的思想。
- 自己を失い(ナシュタ・アートマン):魂の本性を忘れ、外的な欲望やエゴに支配された状態。
- 小知(アルパ・ブッディ):視野が狭く、真理に達しない浅はかな知性。
- 有害(ヒター):他者や社会に対して破壊的・毒性的な存在。
- 世界を滅ぼす(ジャガト・クシャヤ):道徳秩序や人間関係、社会構造を崩壊させる行動傾向。
■全体の現代語訳(まとめ)
前節のような虚無的な世界観に染まった者は、自らの本質を忘れ、狭い知識にとらわれ、やがて残虐な行動に及ぶようになる。
彼らの存在は社会や世界にとって有害であり、まるでこの世界を破壊する使命を帯びているかのような存在となる、とクリシュナは語る。
■解釈と現代的意義
この節は、思想と行動の結びつきの危険性を明確に示している。「世界に意味はない」「何をしてもかまわない」という思想は、やがて他者への共感を失わせ、破壊的な言動へとつながる。倫理や霊的価値観を捨てた思考は、個人だけでなく組織・社会にも大きな破壊力をもたらす。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 教訓・対応 |
---|---|
理念なき経営の危険 | 経済的合理性だけを追求し、倫理や目的意識を欠いた経営は、社員の尊厳と社会の信頼を損なう。 |
行動の正当化 | 「成果がすべて」とする思想は、パワハラ・不正・搾取などの残酷な行為を「必要悪」として容認させる土壌となる。 |
破壊的リーダーシップ | 短期利益や権力維持に執着する指導者は、企業やチームを内部から崩壊させる。 |
教育の意義 | 倫理・哲学・使命を学ばずに育つ人材は、「できるが危うい」存在となり得る。全人的教育が重要である。 |
■心得まとめ
「思想は行動となり、行動は世界を変える――良くも、悪くも」
間違った世界観を持つ者は、やがて自他に破壊をもたらす。
ギーターは警告する――真理を見失い、欲望と無知に支配された人間は、世界に毒を撒く存在になってしまう。
だからこそ私たちは、真の自己を忘れず、正しい見解に根ざした行動を選び取らねばならない。
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