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瞳は心の鏡である。人の本心は、目にあらわれる

孟子は、人の真の在り方を見抜くには**「瞳(ひとみ)」を見よ**と説く。
人間の内面は、言葉や態度で取り繕うことはできても、瞳の奥にある本心まではごまかせないという。

  • 心が正しければ、瞳は澄みきっている。
  • 心が曲がっていれば、瞳はにごり、どこか暗い。
  • だからこそ、**「その人の言葉をよく聞き、その瞳をよく観察せよ」**と孟子は教える。

これは、言葉と目を合わせて観ることで、その人が本当に正直で誠実かどうかを見極める方法だ。
孔子も『論語』で、「人の行い、よりどころ、安んずるところを観察すれば、隠すことなどできない」と述べているが、孟子はそれに加えて**「目を見よ」**と強調している。

最後に孟子は断言する:

人は隠そうとしても、隠し通すことはできない。

この言葉は、人間の誠実さが表面ではなく「目」ににじみ出ることを、極めて簡潔に、しかも深く伝えている。

この章は、人間観察の本質は、心を見抜くことにあるという孟子の哲学を簡潔に語った一節であり、目は誠の窓であるという東洋思想の精髄を表しています。

目次

原文

孟子曰、存乎人者、莫良於眸子。眸子不能奄其惡。
胸中正、則眸子瞭焉。胸中不正、則眸子眊焉。
聽其言也觀其眸子、人焉廋哉。

書き下し文

孟子(もうし)曰(いわ)く、
人に存する者は、眸子(ぼうし)より良きは莫(な)し。
眸子は其の悪を掩(おお)うこと能(あた)わず。

胸中正しければ、則ち眸子瞭(あき)らかなり。
胸中正しからざれば、則ち眸子眊(くら)し。

其の言を聴きて其の眸子を観れば、人、焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや。

現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 孟子は言った:
    • 「人の内面にあるものを見極めるには、目(まなざし)が最も優れている
    • なぜなら、目は悪を隠すことができないからだ。
  • 胸の中(心)が正しければ、目ははっきりと澄んでいる。
  • 胸の中が不正であれば、目は濁って曇っている。
  • 人の言葉を聞き、その目を観察すれば、
     その人がどんな人間かなど、どうして隠せようか。

用語解説

用語意味
眸子(ぼうし)黒目・瞳。転じて、人のまなざし・目元のこと。
奄(おお)う覆い隠す、包み隠す。
瞭(りょう/あきらか)透き通って明るい様子。
眊(ぼう/くらし)濁って曇っている様子。暗く鈍いまなざし。
焉廋哉(いずくんぞかくさんや)どうして隠せようか、いや隠せないという強調。

全体の現代語訳(まとめ)

孟子はこう語った:

「人の内面を見るには、目がもっとも正直で信頼できる指標だ。
なぜなら、目はその人の悪しき心を隠すことができないからである。」

胸の内に正しさがあれば、その目は澄んで輝いている。
しかし、もし心に邪(よこしま)なものがあれば、目は曇り、濁ってしまう。

だからこそ、人の言葉を聞き、その目の様子をよく見れば、
その人がどんな人間か、決して隠せるものではない。

解釈と現代的意義

この章句は、孟子が説く**“誠の心”と“人相の一致”**という考え方を端的に表しています。

1. “目は心の鏡”である

  • 人の内面の状態は、意識せずとも目に現れる
  • 言葉では繕えても、目の輝き・曇り・動きには嘘がつけない。

2. 誠実な者は、目が澄んでいる

  • 心が正しい者の目は明るく、人に安心感を与える。
  • 逆に、心にやましさがあれば、それは目に曇りとして現れる。

3. 本質を見抜くには、言葉より「まなざし」を見よ

  • 相手の話を聞きつつ、その目の動き・光・力を観察すれば、
     その人の人間性が透けて見える。

ビジネスにおける解釈と適用

1. 目はリーダーシップの「信号」

  • 誠実なリーダーは、真摯なまなざしで人を惹きつける。
  • 信頼される人材は、目の輝きに覚悟・責任感・内面の整いがある。

2. 採用・人事評価・面談での見極めに有効

  • 面接時、言葉と目が一致しているか?
  • 熱意のある人は、目が生きており、曇りがない。

3. 誠実な組織文化は「目」に現れる

  • 社員のまなざしが明るく真っ直ぐな会社は、風通しがよく誠実な文化を持つ。
  • 嘘や忖度、疲弊がある会社では、目が濁り、輝きがない。

ビジネス用心得タイトル

「言葉は飾れても、目は飾れない──誠はまなざしに宿る」

この章句は、「誠実さ」と「人間観察」の力を説く、
心理・経営・人材育成において非常に深い示唆を含んでいます。

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