■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「この最高の自己は、無始であるから、要素を持たないから、不変であって、
身体のうちに存在しても、行為せず、汚されることもない。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第31節)
■逐語訳
この「最高の自己(プルシャ/アートマン)」は、
はじめがなく(無始)、
物質的な構成要素(グナ)を持たず、
変化することがない(不変)ため、
たとえ身体という物質の中に宿っていても、
何かを行うことはなく、
また、行為や影響によって汚されることもない。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
最高の自己(プルシャ/アートマン) | 真我。純粋意識。観照者であり、行為の主体ではない。 |
無始(アナーディ) | 始まりがない。永遠であること。 |
要素を持たない(アグナ) | 三グナ(性質:サットヴァ・ラジャス・タマス)に属さない、純粋な存在。 |
不変(アヴィヤヤ) | 決して変化せず、破壊されない。 |
行為せず(アカルタ) | 行為は自然(プラクリティ)がなすものであり、自己はただ観る者。 |
汚されない(アスパルシン) | どんな結果・行動・善悪にも染まらない、純粋性を保つ。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
この世のあらゆる変化する現象の中にあっても、
真の自己(アートマン)は永遠で、不動で、物質的要素に支配されず、
身体の内にあっても行為することはなく、結果にも影響されない。
それは、観察者であり、証人であり、常に純粋な存在として在り続ける。
■解釈と現代的意義
この節は、**「本当の自分とは何か」**に対する答えを示しています。
私たちは日々、「自分がこれをやった」「失敗した」「汚された」と思いがちですが、
それは身体・感情・思考という“道具”に生じた現象にすぎません。
その奥にある「観ている自分=真我」は、行為の影響を受けず、変化せず、常に清らかである――
この気づきこそが、自己解放の始まりです。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
ブレない軸の確立 | 環境や成果に左右されない「自己の核」を持つことで、冷静で継続的な判断が可能になる。 |
自己肯定と自他理解 | 行為や結果に一喜一憂するのではなく、「どんなときでも自分の本質は変わらない」と信じることで、自己信頼が生まれる。 |
リーダーシップ | 外のノイズに動じず、静かに観る意識を持つリーダーは、周囲の混乱の中でも軸を保ちやすい。 |
対人関係の成熟 | 他人の行為や態度に反応するのではなく、それに汚されない“内なる静けさ”を保つことで、成熟した応答ができる。 |
■心得まとめ
「本当の自分は、変わらず、動かず、汚れない」
『バガヴァッド・ギーター』は、私たちの奥にある「真の自己」は、
行為にも、結果にも、肉体にも、影響されないと説きます。
この“内なる変わらぬ自己”を見つめる者は、恐れや執着、怒りや慢心から自由になり、
何が起きても心静かに、そして力強く生きることができるのです。
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