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■引用原文(日本語訳)
一五*
もしも掌に傷が無いならば、
その人は掌で毒をもっていることもできるであろう。
傷の無い人に、毒は及ばない。
悪をなさない人には、悪の及ぶことがない。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- 掌に傷が無いならば:物理的な傷がないように、心にも隙や弱さがなければ、
- 毒をもっていることもできる:危険なものに触れても、その影響を受けることはない。
- 毒は及ばない:毒が体内に入らず、害をなすことができない。
- 悪をなさない人には、悪の及ぶことがない:自らが清らかであれば、外からの悪意や害も心に影響を与えない。
■用語解説
- 掌の傷:心の未熟さ・煩悩・エゴ・無知の象徴。そこに毒(悪)が入り込む隙がある。
- 毒:悪意・中傷・誘惑・災いなど、外部からの害の象徴。
- 悪をなさない人:自己の内側を律し、善に徹する人。自他に害をなさない者。
- 及ばない:影響を受けず、害されることがないという意味。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえば手に傷がなければ、毒を手で持っても体に害はないように、
自らが悪をなさず、清らかであるならば、外からの悪意や災いも自分を傷つけることはない。
清き人は、内なる平安によって護られている。
■解釈と現代的意義
この偈は、「悪に触れることよりも、心の状態が重要である」ことを説いています。
外的な困難や中傷、誘惑にどう対処するかは、その人の内側の在り方にかかっています。
つまり、害をもたらすのは外ではなく、心の傷・隙があるとき。
逆に、心が整っていれば、どんな悪もその人に届かない。
これは現代社会の中で、誹謗中傷や悪意ある言葉に巻き込まれないための深い示唆でもあります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
メンタルタフネス | 他者の批判やネガティブな環境の中でも、心が安定していれば冷静に対応できる。 |
信頼の基盤 | 誠実に行動していれば、多少の誤解や非難があっても、周囲は長期的にその人の清らかさを理解する。 |
クレーム対応 | 相手の怒りや批判に動じず、感情的にならず対応することで、関係修復が可能になる。 |
品格あるリーダー | 他者の悪意に反応せず、自らの行動と態度で道を示すリーダーは組織を導く。 |
■心得まとめ
「傷なき掌に、毒は染みぬ」
清らかに生きる者は、外の悪に触れても乱されない。
その心は風にも波にも動じず、真に自由である。
――だからこそ、日々の善と誠実さが、自分自身を守る最も確かな盾となるのです。
この偈は、仏教における「因果の遮断」や「煩悩に触れぬ智慧の境地」ともつながります。
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