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技術が優れていても

富士重工の「スバル」は、名車と称されるにふさわしい存在だ。しかしながら、月間販売台数が5,000台を超えなかった理由は明確だ。最大の要因は、自社製品を自ら積極的に販売しようとしなかったことにある。また、モデルチェンジを行わなかったことも、もう一つの大きな要因といえる。

もし自社で積極的に販売を行い、社長自らディーラーや消費者のもとを訪れ、直接声に耳を傾けていたなら、「そろそろモデルチェンジが必要だ」という顧客の要望をつかむことができただろう。その結果、スバルの販売台数は数倍に伸びていた可能性がある。

この話題で思い出されるのが、アメリカのGMを世界最大の企業へと成長させた大社長、アルフレッド・スローンの手腕だ。スローンは常に市場を巡り、ディーラーや下請け業者、消費者と直接対話を重ねていた。その中で、フォードのT型車が長年モデルチェンジをしないことから消費者に飽きられている現状を見抜いた。そして、「新型車を次々と投入し、心理的にT型車を陳腐化させる」という戦略を打ち立て、最終的にT型車を生産中止に追い込む結果を生み出したのである。

GMのアルフレッド・スローンが市場を回ることができたのに、富士重工の社長がそれをできない理由はないはずだ。どれほどの大企業の社長であっても、市場や顧客のもとを直接訪れることは避けられない。なぜなら、事業とは市場と顧客に向き合い、そのニーズに応える活動そのものだからだ。

日産が技術への過信によって犯した誤りは、初代サニーに顕著に表れている。性能とコストを重視するあまり、デザインを軽視した結果、販売が伸び悩む事態を招いたのだ。

「技術の日産」という誇りは、まさに両刃の剣と言える。その姿勢には現在もなお技術過信の傾向が見られる。たとえば、性能や品質ではトヨタの乗用車を明らかに上回る部分があるものの、内装に関しては明らかに劣っているのが実情だ。

中小企業も例外ではない。高級木製家具を手がけるA社は、特注品を主力としていたが、仕事量の波が激しいため、自社開発の高級家具を市場に投入した。しかし、大胆なモデルチェンジを行わず、部分的な変更を繰り返すだけだった。その結果、流通業者からは「全然新鮮味がない」と評価され、売上も低迷したままである。

商品は単に製造技術が優れていれば良いというほど単純なものではない。デザインも同じくらい重要な要素だ。自社の技術力に頼るあまりデザインを軽視すれば、顧客は容易に背を向けてしまう。この点を忘れることは致命的なミスにつながる。

製造技術がどれだけ優れていても、それだけで市場で成功するとは限らない、という事例は多くあります。富士重工のスバルや日産の初代サニー、そして高級木製家具のメーカーであるA社の失敗例は、技術を過信し、顧客や市場のニーズを軽視したことに起因しています。

1. 技術過信の罠

富士重工のスバルは、製品としての評価は高かったものの、販売が伸び悩んだ大きな原因は、自らディーラーや消費者と対話し、モデルチェンジを行うなどの顧客ニーズに応える姿勢が欠けていた点にあります。優れた製品を作るだけでなく、定期的なモデルチェンジや新しい魅力を提供することで、顧客の購買意欲を維持する必要があったのです。

同様に日産も、初代サニーの際に性能やコスト面では素晴らしいものを作りながらも、デザインに対する配慮が不足していました。消費者の多くが購入時に重視する「見た目」や「内装の美しさ」についての意識が薄かったため、結果として顧客の心を掴むことができませんでした。

2. 市場や顧客との対話の重要性

アメリカのG.M.社のアルフレッド・スローンは、業界のリーダーとして、自ら市場を回り、顧客やディーラーの声を聞くことで、消費者が何を望んでいるかをいち早く把握し、そのニーズに応えたモデルチェンジを戦略的に行いました。彼のように、市場と顧客に直接耳を傾ける姿勢こそが、成長を支える大切な要素であることがわかります。

3. デザインの役割

A社の高級家具の例でも、「技術は良いがデザインが冴えない」という問題がありました。技術力が優れていても、それが顧客にとって魅力的に映らなければ、購入にはつながりません。市場では、見た目やデザイン、時代に合ったトレンドも、製品の評価や販売に直結します。部分的な改善のみでなく、時には大胆なモデルチェンジも必要です。

4. 顧客視点を忘れない製品開発

技術力の高い製品を作ることは重要ですが、それだけでは競争力を確保できない時代です。成功のためには、技術とデザインを組み合わせ、顧客の目線で製品を見直す必要があります。企業は技術の誇りに甘んじるのではなく、市場の変化や顧客の声を製品に反映させる姿勢を持つことが大切です。

製品は単に技術の結晶ではなく、顧客との対話から生まれる価値であることを忘れないことが、企業にとっての成長戦略と言えます。

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