📖 引用原文(日本語訳)
「悪い事をしても、その業(カルマ)は、刀剣のように直ぐに斬ることは無い。しかし、来世におもむいてから、悪い行ないをした人々の行きつく先を知るのである。のちに、その報いを受けるときに、劇しい苦しみが起る。」
🔍 逐語訳(意訳)
「たとえ悪しき行いをしても、
その業(カルマ)は刀のようにすぐに人を斬ることはない。
だが時がたち、来世あるいは未来に入ったとき、
悪行を重ねた者は、自分の行き着く場所を思い知らされる。
そのときに訪れる報いは、激しい苦しみとなって現れるのである。」
🧘 用語解説
- 刀剣のように直ぐに斬ることは無い:
行為の報い(ヴィパーカ)が即座に現れないことのたとえ。
「今すぐ罰がないからといって、それが安全ではない」という意味。 - 来世におもむいて(アニャ・ローカン・ガッチャティ):
仏教的には死後の転生を指すが、広義には「人生の後半」や「因果が熟す未来」を含意。 - 劇しい苦しみ(ティヴィラ・ドゥッカ):
蓄積された悪業が、ある時点で一気に結果となって噴出する苦痛。精神的・肉体的・社会的な重圧。
🪷 全体の現代語訳(まとめ)
この節は、「悪事にはすぐに罰が訪れないこともあるが、それを安全と錯覚してはならない」と警告しています。
業(カルマ)は刀剣のように即時に斬るのではなく、
時間をかけて確実に報いを積み重ね、
いずれその人の進路と運命に、耐え難い苦しみとして立ちはだかるのです。
見えない刃のように、時を超えて痛みをもたらす力が、業には宿っている――この真理が、静かに語られています。
🏛 解釈と現代的意義
この教えは、「因果の遅延性」=“すぐに結果が現れない”という性質に対する警鐘です。
現代でも「今のところ何も起きてないから大丈夫」と不正や不徳を放置する人や組織が少なくありません。
しかし、この句は**“見えない未来にこそ真の報いがある”**ことを明示しています。
それは、個人の内面における後悔や破綻となって現れることもあれば、
信用喪失・人間関係の断絶・人生全体の破綻といった外的苦悩に形を変えて現れることもあるのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実践的応用 |
---|---|
倫理的判断の遅延リスク | 不正や不正確な報告など、「今は発覚していない」からといってそのままにすれば、後に取り返しのつかない結果が待つ。 |
ブランド・信用の脆弱性 | 一見成功していても、背後に倫理的欠陥があれば、数年後にスキャンダルや社会的制裁を受けることもある。 |
リーダーの判断責任 | 短期的成果にとらわれた決断が、部下や会社全体に後の苦しみを招く。未来の影響まで見据える視点が必要。 |
企業文化と持続可能性 | 刀のような即時のダメージがなくても、非倫理的文化はじわじわと組織を蝕む「時間差の毒」となる。 |
🧭 心得まとめ
「今は何も起こらない――その沈黙の裏に、刃が潜んでいる」
悪行の刃は、すぐに振り下ろされるとは限らない。
だからこそ人は油断し、慢心し、
やがて逃れられない苦しみとともにその報いを迎える。
**真に恐れるべきは、即座の罰ではなく、
心を蝕み、未来を破壊する“見えざる業の力”**である――
この節は、長期的視点での誠実さと慎みの重要性を、深く胸に刻ませてくれる言葉です。
コメント