商品の本質を捉える:マッサージ椅子の分析
顧客視点からの製品評価
K社を訪問した際、会議室に置かれていた「マッサージ椅子」は、パイプ製の簡素なもので、一見して販売に苦労していることが分かる品だった。その理由を社長に説明する際、私は次のような分析を行った。
マッサージ椅子のターゲット顧客
マッサージ椅子の購入を検討する顧客層は、以下のように限定される:
- 営業用施設
旅館、浴場、サウナなどの営業施設が主な購入者となる。この層が商品に求めるのは、高い耐久性とともに、施設全体の雰囲気に調和する高級感やデザイン性である。 - 裕福な個人顧客
家庭用として購入する顧客は、比較的高所得の家庭であり、リビングや休憩スペースに設置することを前提に、見た目の高級感や快適性を重要視する。
この分析に基づけば、簡素なパイプ製の椅子では、これらの顧客層に訴求することが極めて難しい。
販売できない理由
「この椅子は売れない」と判断した根拠は、以下の通りだ:
- 営業用施設との不一致
営業用施設は、高頻度の使用に耐えられる頑丈さと、顧客を満足させるための快適性や高級感を求める。パイプ製の簡素な椅子は、このニーズを満たしておらず、施設の雰囲気にそぐわない。 - 個人顧客の美観重視
広い家に住む裕福な個人顧客は、家具のように空間全体の美しさを損なわないデザインを求める。安価で粗末な見た目の椅子は、そのような家庭で採用されることはない。 - 低価格戦略の矛盾
仮に価格を安く設定して一般消費者層に売り込もうとしても、マッサージ椅子は決して「気軽に購入できる商品」ではない。スペースや費用を考えると、多くの一般家庭では購入が難しい。
商品設計の根本的な誤り
K社のマッサージ椅子は、ターゲット顧客が必要とする要素を捉えられておらず、価格、品質、デザイン、用途がすべて中途半端になっている。このような商品では、市場で競争力を持つことは難しい。
製品設計の誤りを避けるためには、以下のポイントを押さえるべきだ:
- 明確なターゲット設定
商品を使用する具体的な顧客層を定義し、そのニーズを徹底的に理解する。 - 機能とデザインの調和
実用性だけでなく、デザインや質感も重視し、顧客の生活や施設環境に調和する製品を作る。 - 価格帯と付加価値の適合
製品価格と、それに見合う品質や価値を一致させる。低価格を狙う場合も、顧客が「コストパフォーマンスが良い」と感じられるバランスが必要である。
商品開発の成功に向けて
K社のマッサージ椅子の事例は、商品の本質を見極め、顧客の視点に立った設計がいかに重要かを示している。製品を成功に導くためには、顧客がその商品を購入したいと思う明確な理由を提供しなければならない。
以下は具体的な提案例である:
- 営業用施設向けの強化
耐久性や快適性を高め、施設のインテリアに合う高級感のあるデザインを採用する。 - 個人向け商品の高付加価値化
リビングに置いても違和感のない高級感のある素材と、斬新なデザインを取り入れる。 - 顧客ニーズの徹底調査
実際のターゲット顧客にインタビューやアンケートを行い、購入に至る動機や期待を洗い出す。
結論
商品開発の第一歩は、ターゲット顧客が「誰であるか」を正確に見極めることである。K社のマッサージ椅子のように、顧客のニーズを捉えられていない商品は、市場で支持を得ることができない。「顧客が何を求めているのか」を深く理解し、そのニーズに応える製品を提供することが、成功への唯一の道である。
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