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■引用原文(日本語訳)
「敵と味方に対して平等であり、また尊敬と軽蔑に対しても平等であり、寒暑や苦楽に対しても平等であり、執着を離れた人、」
(『バガヴァッド・ギーター』第12章 第18節)
■逐語訳
敵と味方に対して平等であり(サマ・シャトラウ・チャ・ミトレ・チャ)、
尊敬と軽蔑の双方に平等であり(マーナ・アパマーナヨホ・サマハ)、
寒さと暑さ、快楽と苦痛にも平等であり(シート・ウシュナ・スカ・ドゥッケシュ・サマハ)、
そして執着を離れている人(サンガ・ヴィヴァルジタハ)――
このような人物こそ、神に愛される理想の存在である。
■用語解説
- 敵と味方に平等(シャトラウ・ミトレ・サマ):感情や立場に基づいて人を差別せず、誰に対しても公平に接すること。
- 尊敬と軽蔑に平等(マーナ・アパマーナ・サマ):賞賛や侮辱に心を動かされず、どちらにも冷静である態度。
- 寒暑・苦楽に平等(シート・ウシュナ・スカ・ドゥッカ):環境や状況に動じない耐性と平常心。
- 執着を離れる(サンガ・ヴィヴァルジタ):物事に対する「好き・嫌い」「得・損」といったとらわれを超えた状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
敵であっても味方であっても、称賛されても侮辱されても、寒さや暑さ・喜びや苦しみといった外的変化においても、心が揺らぐことなく、執着を離れている人――このような人物は、神にとって最も愛しい存在である。
■解釈と現代的意義
この節は、「対比される二項」に対する完全な中立性・平等性を説いています。
それは単なる“公平”を超えて、**状況や評価、人間関係における精神的な超越(トランスパーソナル)**です。
「味方だから良い」「敵だから悪い」「褒められたから嬉しい」「けなされたから悲しい」――そうした反応的な生き方から離れ、すべてを平等に観る智慧と静けさをギーターは理想としています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
人間関係の平等観 | 部下・上司・取引先・ライバルすべてに対して偏見を持たず、公正で誠実な対応ができる人が、長期的信頼を得る。 |
評価・称賛への態度 | 批判や評価に一喜一憂せず、結果ではなくプロセスに重きを置いて行動することで、安定した成果を出せる。 |
環境変化への適応力 | 暑さ寒さ・繁忙閑散・好況不況などに揺さぶられず、常に冷静に本質を見て判断する。 |
無執着のリーダーシップ | 自身の欲や立場にとらわれず、組織や顧客のために何が最善かを判断できるリーダーは信頼される。 |
■心得まとめ
「すべてに揺れず、すべてを等しく見る心が、真の強さ」
敵も味方も――賞賛も侮辱も――快も苦も――それらにとらわれず、ただあるがままに受け止めて、なお信念を持って歩む者。
ギーターは、動じぬ平等心と、執着を超えた生き方こそが、最高の成熟であり、神の愛に値する資質だと教えてくれます。
ビジネスにおいても、評価や状況に振り回されずに淡々と価値を生み出せる人物こそ、真に尊敬される存在です。
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