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■引用原文(日本語訳)
「彼は苦楽を平等に見て、自己に依拠し(充足し)、土塊や石や黄金を等しいものと見て、好ましいものと好ましくないものを同一視し、冷静であり、非難と称讃を同一視する。」
(第14章 第24節)
■逐語訳
三グナを超えた人は、
・苦しみも喜びも等しく見つめ、
・外的なものに頼らず、自己の内に満足を見出し、
・土くれ、石、金のように、価値が異なるとされるものも等しく扱い、
・好ましいものも好ましくないものも同一に受け入れ、
・冷静であり、
・非難されても称賛されても、動じることがない。
■用語解説
- 苦楽を平等に見る(sama-duḥkha-sukhaḥ):快と不快のどちらにも反応せず、中立に受け止める態度。
- 自己に依拠し(sva-sthaḥ):自分の内面、真我にとどまり、外に依存せずに満ちている状態。
- 土塊・石・黄金(lohastvatma-kāñcanaḥ):価値の異なる物質。真に自由な者にとっては、執着や欲望を起こさせないもの。
- 好悪の平等視(priyāpriyoḥ tulyas):好きなもの・嫌いなものの両方にとらわれず、淡然と接する。
- 非難と称賛を同一視(nindātma-samastutiḥ):他者からの評価に心を動かされない。内なる基準を軸に生きる姿勢。
■全体の現代語訳(まとめ)
三つのグナ(性質)を超えた人物は、
外の状況や人の評価に影響されることなく、常に平等で冷静である。
彼は、苦しみにも喜びにも過度に反応せず、
物質的な価値にも執着せず、
好き嫌いや非難・称賛といった周囲の声にも惑わされない。
その人は、自分の内面に軸を持ち、静かな満足と尊厳を保って生きている。
■解釈と現代的意義
この節は、「外部条件に左右されない本当の強さ」と「精神的自立の境地」を教えています。
- 高く評価されれば喜び、批判されれば落ち込む
- 好きな仕事には全力、嫌いな相手には冷たくなる
- 金や成果を重視しすぎるあまり、判断が鈍る
――これらは現代社会で多く見られる“反応的な生き方”ですが、
ギーターはその逆を指し示します。
「等しき眼差し」を持ち、自己の中にとどまること――それが真の解放であると。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情起伏の安定 | 売上が上がった・下がった、上司に褒められた・怒られた――そういった変化に一喜一憂せず、平常心を保てる人が長期的に信頼される。 |
報酬・肩書に左右されない軸 | 役職・金銭的成功・評価よりも、「自分が正しいと思うことをする」姿勢が、真のリーダーを育てる。 |
ブレない価値判断 | 高級な提案でも胡散臭ければ断る、地味な案でも本質的なら採用する――“土塊も金も等しい”判断基準が組織を救う。 |
人格者の資質 | 批判も称賛もフラットに受け止め、冷静に行動できる人は、人格と力量の両方で評価される。 |
■心得まとめ
「平等に見る眼が、自由と信頼を生む」
苦楽に反応せず、物に執着せず、評判に左右されない――
この不動の心こそが、あらゆる行動の安定と深みを支える。
ビジネスにおいても、内に満ち、外に揺れない者こそが、
長く、強く、美しく、道を進み続けられる。
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