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■引用原文(日本語訳)
「一切の義務を放棄して、ただ私のみに庇護を求めよ。私はあなたを、すべての罪悪から解放するであろう。嘆くことはない。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第66節)
■逐語訳
- 「一切の義務(ダルマーン・サルヴァーン)を捨てて(テャクティヤ)、
- ただ私にのみ(マーム・エーカム)身を委ねよ(シャラナム・ヴラジャ)。
- 私はあなたを、すべての罪から(サルヴァ・パーペビョー)解放する(モクシャイシャーミ)。
- ゆえに、嘆くな(マー・シューチャハ)。」
■用語解説
- 一切の義務(ダルマ):社会的・宗教的・道徳的なあらゆる役割・責務・行為のこと。
- 庇護(シャラナ):全存在を委ねて頼ること。信頼・帰依の極致。
- 罪悪(パーパ):誤り・迷い・執着などの行為がもたらすカルマ(因果的束縛)。
- 解放(モクシャ):魂の自由、カルマからの解脱。悟りの境地。
- 嘆くな(マー・シューチャハ):不安・後悔・恐れに心を乱されるな、という励まし。
■全体の現代語訳(まとめ)
「すべての責務や役割をいったん手放し、ただ私のもとに帰依せよ。
そうすれば、私はあなたをすべての罪や迷いから解き放とう。
だから、もう嘆く必要はない。」
■解釈と現代的意義
これは**『バガヴァッド・ギーター』全編の結論**とも言える、最も深く、力強いメッセージです。
神(クリシュナ)はここで、「知識・行為・信愛」のすべての道の果てに、
**「全的な信頼と明け渡し(帰依)」**こそが、
本当の解放に至る唯一の道であると明言します。
これは、義務や社会的枠組みさえも越えて、
自らのエゴ・不安・執着を手放し、
全存在を神(真理・宇宙・使命)に委ねる境地です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
過剰な義務感からの解放 | 完璧に義務を果たそうとするあまり心が疲弊している人にとって、「すべてを自分で背負わず、信頼して委ねる」ことで心が軽くなる。 |
本質への集中 | 形式や細則にとらわれすぎるよりも、「何のために働くのか」「誰のために尽くすのか」という本質に立ち返る。 |
組織文化と信頼 | 経営者やリーダーが「すべてをコントロールする」のではなく、「信頼して任せる・委ねる」ことで、チームの自律性と力が育まれる。 |
ストレスマネジメント | 不安や過剰責任を感じているとき、「委ねる勇気」を持つことで心の静けさが戻る。 |
■心得まとめ
「全てを明け渡した時、真の自由が訪れる」
ギーターは最終章で語る――
「あなたがあらゆる義務や恐れを手放し、
ただ私を信じて全てを委ねた時、
私は必ずあなたを救う。
だから、もう嘆かなくていい。」
この節は、宗教的な文脈を越えて、
人が「恐れや不安からの自由」に至る最終的な道筋を示すものであり、
その本質は今を生きる私たちのすべての営みにも深く通じています。
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