「交際費」とは、企業が取引先や顧客との関係を円滑にするために発生する接待、贈答、慶弔などの費用を記録するための勘定科目です。この費用は、損益計算書では「販売費及び一般管理費」に分類されることが一般的ですが、税務上は損金算入額に制限があるため、適切な管理と処理が求められます。
交際費とは?
交際費に該当する具体的な費用は以下の通りです:
- 接待費
- 飲食費、会食費、取引先とのゴルフ費用、クラブやバーでの接待費用。
- 贈答品
- 中元や歳暮、取引先への記念品、祝儀や香典。
- 慶弔費
- 取引先の結婚式、葬儀への参列に伴う費用。
- 取引先の接待に関わる交通費
- 接待を目的としたタクシー代や交通費。
- その他の交際目的の支出
- 取引先との関係を強化するための費用。
交際費の会計処理
- 交際費の支払い時の仕訳
交際費が発生した際、「交際費」勘定に計上します。 例:取引先との会食費を現金で3万円支払った場合
借方:交際費 30,000円
貸方:現金 30,000円
- クレジットカードで支払った場合
クレジットカードで交際費を支払った場合、「未払金」として処理します。 例:贈答品代5万円をクレジットカードで購入した場合
借方:交際費 50,000円
貸方:未払金 50,000円
後日クレジットカード代金を支払った場合:
借方:未払金 50,000円
貸方:普通預金 50,000円
- 消費税の処理
交際費に含まれる消費税は課税仕入れとして処理されません。仕入税額控除の対象外です。 例:税込5,500円(税抜価格5,000円、消費税500円)の場合
借方:交際費 5,500円
貸方:現金 5,500円
税務上の取り扱い
- 損金算入の制限
法人税法では、交際費は一部または全額が損金不算入となる場合があります。ただし、以下の制度が適用されます:
- 中小法人(資本金1億円以下の法人)
年間800万円までの交際費は全額損金算入可能。それを超える部分は損金不算入。 - 資本金1億円超の法人
原則として全額損金不算入。ただし、一人当たり5,000円以下の飲食費は損金算入可能。
- 5,000円基準の適用
一人当たり5,000円以下の飲食費(領収書に飲食の明細が記載されていることが条件)は、交際費に該当せず、損金算入が可能です。 - 消費税の扱い
交際費に含まれる消費税は仕入税額控除の対象外となります。
交際費の具体例
- 取引先との飲食費
借方:交際費 20,000円
貸方:現金 20,000円
- 贈答品購入(税抜処理なし)
借方:交際費 30,000円
貸方:普通預金 30,000円
- 取引先との交通費
借方:交際費 5,000円
貸方:現金 5,000円
- 会食費が5,000円以下の場合(税務上損金算入可能な場合)
借方:会議費 4,500円
貸方:現金 4,500円
交際費の注意点
- 税務調査の対象になりやすい
交際費は税務調査で注目されやすい科目であるため、用途や対象者を明確に記録し、領収書を適切に保管します。 - 5,000円基準を守る
一人当たり5,000円以下の飲食費は交際費とせず、他の科目(例:会議費)で処理することが可能です。 - 個人用費用の排除
個人の娯楽費用やプライベートの支出を交際費として計上しないよう注意します。 - 支出内容の記録
領収書には、日付、金額、用途、対象者の情報を必ず記載しておきます。
交際費の管理方法
- 支出記録の明確化
交際費の支出内容を詳細に記録し、税務調査に備えます。 - 経費管理システムの活用
経費精算システムを導入し、交際費の支出を一元管理します。 - 損金算入限度額の把握
中小法人の場合、損金算入限度額800万円を超えないよう計画的に交際費を管理します。 - 税理士との連携
交際費に関する税務処理や税務調査への対応について、税理士に相談することで正確な対応を行います。
まとめ
「交際費」は、企業の取引先との関係構築において重要な費用ですが、税務上の取り扱いに制限があるため、正確な会計処理と管理が求められます。一人当たり5,000円以下の飲食費や損金算入限度額を意識し、適切に処理することで税務リスクを軽減できます。また、領収書の保管や支出記録を徹底することで、税務調査への備えも万全にすることが可能です。
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