目次
■引用原文(日本語訳)
一六
聡明な人は、瞬時のあいだ賢者たちに仕えても、真理をはっきりと知る。かれには明らかな知慧が存するからである。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- 聡明な者(内面的な理解力と受容性を備えた者)は、
- たとえわずかな時間しか賢者と接していなくても、
- すぐに真理を正確に捉えることができる。
- それは彼に、「明らかな知慧(洞察の力)」が備わっているからである。
■用語解説
- 聡明な人(ヴィニータ・プルシャ):謙虚さ・集中力・純粋な探求心を持ち、真理に向き合う素直さを持つ人。
- 瞬時のあいだ(カラマッタ):文字通りの短い時間。だが本質的には「一瞬にして核心を掴む力」を意味する。
- 明らかな知慧(ヴィパッサナー・パンニャー):物事の本質を直感し、理解する力。知識ではなく、心の澄明さに由来する智慧。
- 真理(ダンマ):仏教においては、「生の法則」「因果の理」「正しい生き方の道」を含む。
■全体の現代語訳(まとめ)
賢者の言葉や態度に、わずかな時間触れただけでも、聡明な人は真理の核心を即座に理解する。
それは、彼の心に「明らかな智慧」が宿っており、曇りなく真実を見抜く目を持っているからである。
時間や量ではなく、質と感受性こそが、学びを決定づける。
■解釈と現代的意義
この章句は、「学ぶためには長時間の訓練や努力だけでなく、“心の準備”と“知慧の明確さ”が必要である」という教訓です。
現代でも、同じ講義・本・経験を通じて、人によって得られるものがまったく異なるのは、“知慧のレンズ”が違うからです。
真理を捉える力は、「どれだけ長く接するか」よりも、「どれだけ深く聞けるか」「どれだけ開かれた心を持てるか」によって決まる――この思想は、教育・研修・日常生活においても非常に重要な指針となります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
新人育成 | 一瞬のやり取りから本質を掴める人材は、実践力・応用力において抜きん出る。 |
フィードバック文化 | どれだけ指導しても成果が出ない人と、短い助言で成長する人の差は「知慧の明晰さ」にある。 |
リーダーシップ | 賢者と短く接する中で方向性を掴める者は、判断力と成長スピードが早い。 |
自己成長 | 本質を掴む人は、多くを求めずとも、少しの中に深い意味を見出し、すぐに行動に変えられる。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「真理は量ではなく、澄んだ心にのみ届く」
学びの時間が短くても、心が澄んでいれば、一言の中に宇宙が見える。
真理は長い訓練の中だけでなく、鋭い目と柔らかな心の中にこそ宿る。
賢者の声を聞く者は多いが、真理を聞き取る者は、心の器が澄んでいる者である。
コメント