目次
■原文(日本語訳)
第2章 第36節
クリシュナは言った。
「また、あなたの敵は、語るべきでない多くのことを語るであろう。
あなたの能力を難じながら。
これほどつらいことがあろうか。」
■逐語訳
- あなたの敵は(アヴァチュヤ・ヴァーダーン・チャ):あなたを敵視する者たちは。
- 語るべきでないこと(アヴァチュヤ・ヴァーダーン):口にするには値しない、中傷、嘲笑、侮辱。
- 多くのことを語る(ヴァクシャヤンティ):多くの悪口や嘲笑を言いふらす。
- あなたの能力を難じながら(ニンドンタス・タヴァ・サーマルヤム):あなたの実力・力量を否定しながら。
- これほどつらいことがあるか(タタハ・ドゥカタラム・ヌ・キム):それ以上に苦しいことがあるだろうか。
■用語解説
- アヴァチュヤ(語るべからざる):下劣で不適切、品性に欠けた言葉。
- ニンダ(非難・中傷):軽視・批判・蔑視的な発言。
- サーマルヤ(能力・力):実力や技量、人格的価値。
- ドゥカタラム(最大の苦しみ):心理的屈辱として最も痛烈なもの。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、もし戦うべき時に戦わなかったなら、
敵は「言葉にすべきでないほどの侮辱」をもってあなたを中傷し、
「恐怖に逃げた者」「臆病者」「無能者」として嘲るようになると告げます。
この精神的屈辱は、肉体の痛みよりも苦しいものになる――
と、クリシュナは強く警告するのです。
■解釈と現代的意義
この節では、「外部からの評価が崩れることによる苦痛」が強調されます。
特に敵からの侮蔑や悪評は、名誉ある者にとって最大の痛みであり、
一度信頼を損なえば、その穴は剣よりも深く心を傷つけるという現実的な心理を突いています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
評判リスク | 意図せず逃げ腰な行動を取れば、周囲や競合から「無能」と見なされ、その悪評が広がってしまう。 |
敵は常に見ている | 信頼を落とせば、敵(競合・反対勢力)はそれを最大限に利用する。だからこそ、軸を保ち行動することが大切。 |
心理的な打撃の回避 | 実力への侮辱や人格否定は、リーダーやキーパーソンにとって最大のストレス源。事前に「逃げない覚悟」が必要。 |
ネガティブレピュテーション | 一度貼られたレッテルは訂正が難しい。慎重さよりも、正しい局面では毅然と行動することが、後の自尊心と信頼を守る。 |
■心得まとめ
「敵の言葉は、名誉なき者に容赦なく降る」
一度“逃げた者”の名が立てば、
敵はそれを、嘲り、貶め、利用する。
その言葉の剣は、肉体よりも心を深く斬る――
だからこそ、義務と誇りを背負って立ち向かうことが、
真の苦痛を避ける唯一の道となるのです。
このあと第37節では、「戦えば勝っても死んでも意味がある」という前向きな二重の結果が示され、
クリシュナの説得はより戦意を鼓舞する方向に転じていきます。
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