目次
引用原文(現代語訳)
いとも麗わしき国王の車は朽ちてしまう。
身体もまた老いに近づく。
しかし善い立派な人々の徳は老いることがない。
善い立派な人々は互いにことわりを説いてきかせる。
逐語訳と用語解説
表現 | 解釈・補足 |
---|---|
麗わしき国王の車 | 王権・富・名声など、世俗の栄光や威厳の象徴。最も立派なものであってもやがて朽ちる。 |
身体もまた老いに近づく | いかに若く、健康であっても時間とともに衰える肉体。 |
善い立派な人々(サッタ・プルッサ) | 真理を知り、徳を実践する人々。仏弟子・修行者・師。 |
徳(ダンマ) | 善行・正しき行為・真理にかなった生き方。 |
ことわりを説いてきかせる | 他者と智慧を分かち合い、正道に導こうとする行為。仏教における「説法」「法の教え」。 |
全体の現代語訳(まとめ)
たとえどんなに美しく立派であった国王の車でさえ、
やがては朽ちて使い物にならなくなる。
人の身体もまた老いへと向かい、避けられぬ衰えに包まれていく。
だが、正しき心を持ち、善く生きた人々の「徳」は、
歳月に敗れることなく残り続け、
彼らは互いに、真理の言葉を語り伝え、導き合うのである。
解釈と現代的意義
この偈は、目に見えるものはすべて老朽化するが、目に見えぬ「徳」だけが永続するという仏教の根本的な価値転換を明示しています。
現代では、地位・モノ・身体美・若さなどが成功の象徴とされがちですが、それらは必ず失われます。
一方、「誠実」「思いやり」「正しさ」「信頼」など、内面的な徳は、人の心に残り、語り継がれ、未来に善をもたらすのです。
ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実践的な適用例 |
---|---|
持続的な価値の創出 | プロダクトや組織構造は時と共に陳腐化するが、「企業理念」「行動原則」は永く人に影響を与える。 |
人材育成における“徳”の継承 | スキルや成果よりも、誠実さ・協働性・志といった“徳の教育”を重視し、伝えていくことが真の育成。 |
リーダーシップの本質 | 支配力・肩書ではなく、どれだけ「道を語り、示すことができるか」が尊敬を生む。 |
レガシーの形成 | 実績ではなく「どのように他者の人生に影響を与えたか」が、自分の徳として語り継がれる。 |
心得まとめ(感興のことば)
「栄光は朽ちる。だが、語られた徳は、時を越える」
美しき車も、やがて錆びる。
この身体も、老いに向かう。
だが、誠実に生きた人の「徳」は、
朽ちることなく、次の人に灯をともす。
語られるべきは肩書ではなく、
残された「ことば」と「生き様」。
それが、真に価値ある人生の証である。
この偈は、目に見える成果よりも「人としてのあり方」が未来を照らすことを教えてくれます。
コメント