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耐えることは、人生を支える一本の柱である

昔の人はこう言った――
「山に登るときは、傾いた道に耐えながら進まなければならない。雪道を行くときは、危ない橋を渡るのに耐えることが必要だ」と。

この「耐(た)える」という一字こそが、どれほど深い意味を持っていることか。

人の心は傾きやすく、世の中はでこぼこで生きづらい。
だからこそ、もし私たちがこの「耐える心」を持たずに歩もうとすれば、
たちまちやぶや草むらに足をとられ、穴や堀に落ちてしまうようなものだ。

「耐える」ことは決して消極的な姿勢ではなく、むしろ前に進むための強い支えであり、
人生の困難をくぐり抜けるための、内なる「芯(しん)」のようなものなのだ。

この条は、苦難にあってもなお歩みを止めないための、精神の杖としての「耐」の価値を、私たちに静かに伝えている。


原文(ふりがな付き)

「語(ご)に云(い)う、
『山(やま)に登(のぼ)りては側路(そくろ)に耐(た)え、
雪(ゆき)を踏(ふ)んでは危橋(ききょう)に耐う』。

一(いち)の耐(た)えの字(じ)、極(きわ)めて意味(いみ)有(あ)り。
傾険(けいけん)の人情(にんじょう)、坎坷(かんか)の世道(せどう)の如(ごと)き、
若(も)し一(いち)の耐(た)えの字(じ)を得(え)て撑持(しょうじ)し過(す)ぎ去(さ)らざれば、
幾何(いくばく)か榛(はしばみ)・坑塹(こうざん)に堕入(だにゅう)せざらんや。」


注釈

  • 側路(そくろ):山道のような傾いた、険しい道。
  • 危橋(ききょう):壊れやすく危険な橋。比喩的に「不安定な人生の道」。
  • 傾険(けいけん):人の心が不安定で、波立ちやすいこと。
  • 坎坷(かんか):困難ででこぼこした人生。苦難の多い道。
  • 撑持(しょうじ):支えること。耐え抜く心の柱。
  • 榛・坑塹(しん・こうざん):やぶ、穴、堀など、人生の落とし穴。

パーマリンク候補(英語スラッグ)

  • endure-and-prevail(耐えてこそ乗り越えられる)
  • strength-through-patience(忍耐こそ力なり)
  • one-word-endure(ただ一字、耐)

この条は、「耐えることは地味だが尊い」という静かな真理を、身にしみる比喩で語っています。
現代の「即効性」や「成果主義」が重視される社会においてこそ、目立たないが崩れない生き方としての「耐」が、私たちを本質へ導いてくれるでしょう。

1. 原文

語云、登山耐側路、踏雪耐危橋。
一耐字、極有意味。
如傾險之人情、坎坷之世道、
若不得一耐字撐持過去、幾何不墮入榛坑塹哉。


2. 書き下し文

語に云(い)う、「山に登りては側路(そくろ)に耐え、雪を踏んでは危橋(ききょう)に耐う」と。
一の「耐(たい)」の字、極めて意味有り。
傾険(けいけん)の人情、坎坷(かんか)の世道のごとき、
若(も)し一の「耐」の字を得て撐持(しょうじ)して過ぎ去らざれば、
幾何(いくばく)か榛坑塹(しんこうざん)に堕(お)ち入らざらんや。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)

  • 「ことわざに曰く、山を登るときは斜めの道に耐え、雪道を歩くときは危うい橋に耐えるべきである」
     → 困難な道を進むには、耐える姿勢が必要である。
  • 「“耐える”という一文字には、極めて深い意味が込められている」
     → 忍耐は、単なる我慢ではなく、生き抜く知恵でもある。
  • 「人の心が傾きやすく、世の中が険しいという状況の中で」
     → 人間関係や社会には常に不安定さ・不条理がつきまとう。
  • 「もし“耐える”ことができなければ、それらに押し潰され、苦しみの谷に落ちてしまうだろう」
     → 忍耐を欠けば、人生の障害に飲み込まれ破滅を迎える危険がある。

4. 用語解説

  • 側路(そくろ):山道の傾斜がきつく、危険な側面の道。
  • 危橋(ききょう):崩れやすく不安定な橋。転じて危険な状況の例え。
  • 傾険(けいけん):傾きやすく、険しい状態。人の気持ちが不安定な様。
  • 坎坷(かんか):でこぼこして通りにくい道。転じて、波乱の多い人生・世の中。
  • 撐持(しょうじ):支えて持ちこたえること。
  • 榛坑塹(しんこうざん):茨(いばら)と落とし穴。困難・災難・失敗の象徴。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

ことわざに言う、「山道では斜めの道に耐え、雪の上では危うい橋に耐えるものだ」。
この「耐える」という一文字は、非常に深い意味を持っている。
人の心が揺れやすく、世の中が不安定であるなかで、
この“耐”の心をもたなければ、私たちはすぐに困難の穴に落ちてしまうことになるだろう。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「耐えることの本当の意味と力」**を説いています。

  • 「耐える」とは、単に我慢することではなく、状況を受け止め、軸をぶらさずに前に進む力である。
  • 社会や人間関係が理不尽に満ちる中、感情や衝動に任せて動けば、道を誤る。
  • だからこそ、**“耐”は生き抜く知恵であり、心の防御策”**なのです。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「困難や混乱のときにこそ、“耐える力”がリーダーシップを試す」

  • 社内トラブル、経営の逆風、人間関係の摩擦──そのすべてが「耐」の局面。
  • パニックにならず、冷静に支え続けるリーダーは、信頼され、チームの支柱となる。

●「感情的な判断は、危険な道を踏み外す」

  • ムッとしたから辞める、焦ったから無理な投資をする──こうした決断の多くは“耐”の不足から起こる。
  • 踏みとどまって考える力こそ、意思決定の核心。

●「粘り強く、静かに継続する者が最後に勝つ」

  • 成功とは“耐える力の総量”とも言える。続ける力は、成果に直結する。

8. ビジネス用の心得タイトル

「耐えて進め──不安定な時代を支える静かな力」


この章句は、変動の激しい現代社会において、最も見落とされがちながら最も重要な“忍耐”の徳を、静かにしかし力強く教えてくれます。

「感情で動かない」「無理をしない」「やるべきことを淡々と続ける」──
これらを支えるものが、“耐”の一字です。

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