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盛りにこそ衰えの兆しあり、底にこそ再生の芽が宿る

平時には備えを、乱時には忍耐を。

物事がもっとも盛んなとき、すでにその中に衰えの兆しは潜んでいる。
逆に、すべてを失ったように思えるどん底の中にこそ、新たな再生のきっかけが芽生えている。

だから、君子たる者は順調なときほど気を引き締め、未来の災いに備えなければならない。
そして困難や試練のときには、百の忍耐をもって耐え抜き、志を果たす道を探るのが正しい姿である。

波に身を任せず、変化の中に沈まず、心を定めて歩み続ける――
これこそ、人生の本質を見抜く者の姿である。


原文(ふりがな付き)

衰颯(すいさつ)の景象(けいしょう)は、就(すなわ)ち盛満(せいまん)の中に在(あ)り、発生(はっせい)の機緘(きかん)は、即(すなわ)ち零落(れいらく)の内に在り。故(ゆえ)に君子(くんし)は安(やす)きに居(お)りては、宜(よろ)しく一心(いっしん)を操(と)りて以(もっ)て患(うれ)いを慮(おもんばか)るべく、変(へん)に処(しょ)しては、当に百忍(ひゃくにん)を堅(かた)くして以て成(じょう)るを図(はか)るべし。


注釈

  • 衰颯の景象:物事が衰え始めるきざし。「盛り」に潜む下り坂。
  • 就ち(すなわち)盛満の中に在り:絶頂期にすでに転落の種があるという意。
  • 機緘(きかん):きっかけ、転機。ここでは再生の兆し。
  • 零落の内に在り:すべてを失ったような時に、実は再生が始まっている。
  • 一心を操りて患を慮る:平時にこそ心を整え、将来の憂いに備えること。
  • 百忍(ひゃくにん):何度も忍び耐えること。張公芸の故事にちなみ、「忍」を百回書いて家訓としたという伝説に由来。
  • 成るを図る:成し遂げる、実現することを目指す。

パーマリンク(英語スラッグ)

  • endurance-through-adversity(逆境を耐え抜く)
  • prepare-in-peace-act-in-storm(平穏に備え、嵐に動く)
  • rise-from-fall(落ちる中に芽生える上昇)

この条文は、まさに**「盛者必衰」「禍福はあざなえる縄のごとし」**といった人生の無常観と、
その中でどう心を保ち、どう行動するかを深く教えてくれる名言です。

特に現代のような変化の激しい時代においては、
「うまくいっているときこそ備えよ」「どん底でも希望はある」というこの教えが、
多くの人にとって強い指針になるはずです。

目次

1. 原文

衰颯景象、就在盛滿中。
發生機緘、卽在零落內。
故君子居安、宜操一心以慮患;
處變、當堅百忍以圖成。


2. 書き下し文

衰颯の景象は、すなわち盛満の中に在り。
発生の機緘は、すなわち零落の内に在り。
故に君子は安きに居りては、宜しく一心を操りて以て患いを慮るべく、
変に処しては、当に百忍を堅くしてもって成るを図るべし。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 衰颯の景象は、すなわち盛満の中に在り。
     → 衰えや凋落の兆しは、実は最も盛んな状態の中にすでに存在している。
  • 発生の機緘は、すなわち零落の内に在り。
     → 新しい芽生えやチャンスのきっかけは、むしろ物事が衰えている時にこそ潜んでいる。
  • 故に君子は安きに居りては、宜しく一心を操りて以て患いを慮るべく、
     → だからこそ君子は、平穏な時こそ心を引き締めて、将来の災いを見越して備えるべきであり、
  • 変に処しては、当に百忍を堅くしてもって成るを図るべし。
     → 変化や困難に直面した時には、あらゆる我慢と忍耐を持って、成し遂げることを図るべきである。

4. 用語解説

  • 衰颯(すいさつ):衰え、凋落、散りゆくさま。
  • 盛満(せいまん):繁栄・絶頂の状態。
  • 機緘(きかん):機会と契機。「発生のきっかけ」「再生の芽生え」を指す。
  • 零落(れいらく):衰退、落ちぶれること。
  • 操一心(そういっしん):一心不乱、心を引き締めて集中すること。
  • 百忍(ひゃくにん):百の忍耐、あらゆる苦しみを耐えること。
  • 圖成(とせい):成功・成就を図る、物事を成し遂げようとすること。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

衰えの兆しは、実は最も繁栄している時にすでに潜んでいる。
逆に、物事が衰退しているときにも、新たな始まりのきっかけが隠れている。
だからこそ、立派な人物は平穏無事なときこそ、心を引き締めて災いを予測し備えるべきであり、
変化や困難に直面した時は、あらゆる我慢をもって、そこから成功を導く努力をすべきである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「栄華の中にこそ崩壊の種があり、失敗の中にこそ再生の芽がある」という二律背反的な真理を説いています。

  • 盛者必衰、禍福は糾える縄の如しという東洋的世界観。
  • 状況に一喜一憂することなく、常に静かな先見性と持続的努力を大切にせよという教え。

まさに、“好調時に油断せず、逆境時に希望を持て”という実践的なリスク管理と再起戦略の指南です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「成功の裏に、衰退の種があると心得よ」

市場拡大・利益増・注目の高まり──その裏には、過信・慢心・見えない歪みが潜む。
平穏無事な時期こそ、リスク分析・構造改革・次の一手の準備を。

● 「逆境は、チャンスの種を含む」

売上減・顧客離れ・リストラ──それらは表面的な“零落”だが、変化のきっかけや新規発想の好機でもある。
「なぜ今、これが起きているか」を洞察できれば、再生の原点が見えてくる。

● 「経営者・リーダーは“平時こそ構える力”を」

業績好調なときにこそ、あえて「もし今崩れたらどうするか」を想定する力が、組織の持続性と危機耐性を生む。
また、危機の真っ只中では、百忍=耐え切る覚悟と連続的努力が、復活を導く。


8. ビジネス用の心得タイトル

「盛に備え、衰に希望を──先を読む心と、耐え抜く胆力」


この章句は、事業の浮き沈みをどう見抜き、どう対応するかという経営的洞察にあふれた知恵です。

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